はじめに
鉢植えは植物の性質に合った鉢を選ぶのも大切です。ラン、特に着生ランは風通しのよい環境を好み、根は多湿を嫌いますので、栽培する鉢もおのずと通気性に優れたものを選ぶことになります。
今回はランの栽培に用いる鉢について、お話ししたいと思います。以降、ラン=着生ランとしてお話しします。
着生ランって何?と言う方は「蘭のふしぎ 着生と根」 ( https://love-evergreen.com/evergreenpost/post/3064 )をお読みいただくと、より深くお楽しみいただけると思います。
素焼き鉢とは
まず最初に紹介したいのは、ラン栽培で最も一般的な鉢、素焼き鉢です。粘土を低温(900℃前後)で焼いて作った植木鉢で、表面に水や空気を通す小さな孔がたくさんあります(多孔質と言います)。最大の利点は通気性に優れることです。ランは空気中に根がさらされる状態を好むので、通気性に優れた素焼き鉢は栽培にもってこいです。
素焼き鉢の欠点
しかし、素焼き鉢にも欠点があります。まず、もろくて重いことです。地面が固い場所では(コンクリートなど)、30cmくらいの高さから落としただけで、簡単に割れてしまいます。鉢同士が接触して、欠けることもあります。鉢が重いと吊して栽培する場合、支柱などに負担がかかります。
次に、汚れやすいことが挙げられます。使い続けると、表面に緑色の藻のようなものや黒ずみが付きます。鉢としての機能にさほど支障はありませんが、見た目があまりよくありません。
このように、多少の欠点はありますが、ラン栽培では扱いやすくて根の育ちも良く、比較的手に入りやすいので、使ったことのない方は一度試してみていただきたいです。
草花と素焼き鉢
普通の草花も根が元気に育つのではないかと思い、素焼き鉢にダリアを植えたことがあります。草花の培養土を用いたのですが、乾きすぎて水やりが大変でした。根が水を吸う前に鉢の表面から全部水が逃げていったのではないか、と思えるくらいの乾き方でした。ランの栽培が素焼き鉢でうまくいったので、気をよくしていたのですが、植物と鉢はあったものを選ばないといけないな、と痛感しました。
その他、ランに適した鉢
素焼き鉢にも色々なバリエーションがあります。また、軽くて割れない樹脂製の鉢もよく使います。すべてに共通しているのは、通気性が良いことです。私が今まで使って、栽培に適していると思った鉢をいくつか紹介します。
- 胴抜き鉢
素焼き鉢のバリエーションのひとつです。ご覧の通り、側面部分に穴が空いています。通常の素焼き鉢以上に通気性がよいです。ファレノプシス(コチョウラン)などは特によく育ちます。元気のよい株なら、植えて数ヶ月くらいで、側面穴の部分から根が鉢外に飛び出してきます。穴が空いている分、通常の素焼き鉢より軽量なのかもしれませんが、あまり実感はありません。
姿が面白い鉢なので、側面穴の部分に多肉植物を植えるとか、ラン栽培以外の使い方はないかと考えています。
- 大穴鉢
素焼き鉢のバリエーションで、鉢の底に空いている排水穴が大きい鉢です。実際は、底が抜けた鉢と言った方が正しいかもしれません。底部の通気性が良く、水ゴケなどの植え込み材料が均等に乾きやすい利点があります。使っていて、通常の素焼き鉢より乾くのが早く、通気性がよいと感じました。
- 穴鉢
樹脂製の鉢で、軽くて丈夫です。側面には穴が空いており、網かごのような姿をしています。特に吊り下げて栽培する場合は、この鉢をおすすめします。強風などで落下しても壊れません。素焼き鉢に比べると、通気性はやや劣る気がします。逆に考えると、保水性が良いとも言えます。
- 木枠バスケット
木材を組み合わせたバスケットです。基本的に吊り下げて使います。四角のほか、八角形や、浅いものなどいくつかのバラエティーがあります。特に通気性の良い環境を好むランに適しています。スタンホペアのように花茎が下や横に伸びるランにも用いられます。
さいごに
ランに用いるいろいろな鉢を紹介しました。他にも特定のラン専用の鉢もあり、興味が尽きることはありません。植物の性質を考えて鉢を選ぶのも楽しいものです。デザインだけではなく、性質や機能も考え、鉢に凝ってみるのはいかがでしょうか? 園芸の楽しさがひとつ広がると思います。
(ヤサシイエンゲイ 小林昭二)
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