今回は凄い名前がついている「ラショウモンカズラ」を紹介します。シソ科ラショウモンカズラ属の多年草で、山地の林内の湿った場所や渓流沿い自生します。本州から九州に分布しています。
大きく突出した花を、室町時代の謡曲「羅生門」に登場する源頼光の四天王のひとり、渡辺綱が羅生門で切り落とした鬼女の腕に見立て「羅生門蔓」の和名がついたとされていますが、そのエピソードと花のイメージが合致しないのは私だけでしょうか?
写真は、2022年5月中旬に山梨市内の小楢山(こならやま)の登山道で撮ったものです。この山は拙宅の近場ですので、年に5回以上は登っています。花期の4月、5月も数回この道を歩いていますが、ラショウモンカズラに気づいたのは今回が初めてでした。新しい発見が毎回あるのも、山歩きの楽しみの一つです。
いつものように林道を約1時間登ってきて本格的な登山道に変わる辺りで小休止した際、芳香が漂っていることに気づき周りを見渡すとこの紫色の花が目に飛び込んで来ました。登山道から数メートル離れており、陽が当たらず薄暗かったこと(上の写真はフラッシュ使用)、株数も少なかったので気づきにくかったことが納得できました。遠目では「アキギリ」かな? とも思いましたが、それは季節が違いました。
よく見ると、ラショウモンカズラの特徴である紫色の唇形花(下に反り返った大きな浅く裂けた濃紫色のまだら模様のある下唇)などが確認できました。ここ小楢山では初めてだったので、下山途中に立ち寄ると陽が当たっていました。躊躇することなく陽を浴びたラショウモンカズラをカメラに収めました。それが次の3枚です。
朝は少なかった花の香りだけを確かめ、下山してきた午後には花だけでなく葉や茎の香りも嗅いでみましたが、草全体からよい香りが出ていることがわかりました。朝よりも株数が増え(花の数も増した)ていたので、ますます香りが強く漂っていました。その後も同じ場所を通りましたが花は終わっていました。茎が横に広がって伸びて、‘カズラ’の名の如く蔓性であることがわかりました。
(山梨市森林セラピー推進協議会 森林セラピスト / 四十物治夫(あいものはるお))