タンポポの綿毛を摘んでフウッと息を吹きかけ、綿毛飛ばしをして遊んだことはありますか?
柔らかな綿毛が風に乗って青空へ飛んでいくのをみると、なんだか爽やかな気持ちになります。地面に深く根をはり生きている植物は、種子を拡散させる時以外は全く動かないように感じますが、実は日々動いています。今回は、年間を通じて運動するタンポポの生態を紹介しましょう。
閉じたり開いたり
タンポポの花は、昼と夜で花を閉じたり開いたりする開閉運動をおこなっています。花粉を媒介してくれる昆虫がやってくる昼間には大きく花を開き、夕方や雨が降るような暗い日には花を閉じます。花が終わった後の果実(綿毛になった部分)も、よく晴れて種子を拡散しやすい日には丸く綿帽子を開いていますが、雨で綿毛が濡れてしまいそうな日にはキュッと窄まって自ら湿らないようにしているのです。
ちなみに、タンポポの花は頭状花とよばれる小さな花が多数集まった集合体です。1枚の花びらのように見える部分が雄蕊と雌蕊を持った一つの花で、よく育ったセイヨウタンポポだと200個近い花が集まって、一つの花を作っています。だから、綿毛になると1本1本の根元に1個ずつの種子がついてバラバラに飛んでいくのですね。
短い長い
さらに花の茎も動きます。冬を越したタンポポは早春に蕾を付けます。その時花の茎は地上すれすれの高さで短いのですが、気温が上がるにつれて長くなっていきます。花の茎は蕾から開花まで地面に対して垂直に伸びていますが、花が終わる頃になると横に倒れてしまいます。これは低い安全な所で果実を熟成させ次の世代に繋げるためにより良い種子を作るためです。そして種子が出来ると花の茎はまた立ち上がります。開花していた頃よりもさらに長く花の茎が伸びて、綿毛がしっかり風を捕え遠くまで飛びやすいように工夫しているのです。
この現象は他の植物でも見られます。ハコベは花が上向きに咲きますが、花が終わってしまうと下向きになります。種子が出来るとまた上向きになり、熟した果実は上から裂けて風や衝撃で揺れると種子が飛び散ります。もしも果実が下向きのまま裂けると、種子は塊のまま親の株の下に落ちて、子孫の株が拡散できないからです。
人間や動物のように歩いたり泳いだりしないので、全く動かないように見える植物たちも、実は様々な動きをすることで生き残る知恵を持っています。道端の植物をじっと観察してみてください。びっくりするような動きを見せてくれるかもしれませんよ。
- タンポポ属(エバーグリーン植物図鑑)
- 今回写真で載せているセイヨウタンポポ(エバーグリーン植物図鑑)
- 前の記事を読む(身近な草花 ヒメツルソバ)
- 次の記事を読む(そのまま食べても、スイーツでも、果実酒でも)