万葉の世に想いを馳せて花を眺むる

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植物に興味をもつようになるきっかけは人それぞれですが、私の友人の場合は万葉集。わが国最古の和歌集である万葉集には、4,500余首の歌が収められています。そしてその1/3に、150種を超える植物が詠まれているのだそうです。

そんなとき、取材に出かけた山梨市で、笛吹川沿いの万力公園に案内していただきました。松や雑木を活かして作られたこの公園には、万葉集に登場する動植物が集められた万葉の森があります。春のみち、夏のみち、秋のみちという3つのルートでは、万葉集に詠まれた季節の草木花が楽しめます。

万葉集に登場する夏の草木花が植えられた「夏のこみち」

万葉集に登場する夏の草木花が植えられた「夏のこみち」

小川にはホタルも住んでいます。毎年6月には「ホタル鑑賞会」も。

小川にはホタルも住んでいます。毎年6月には「ホタル鑑賞会」も。

 

「夏のこみち」では、こんな歌が書かれた案内板を見つけました。

メハジキの説明が書かれた案内板

メハジキの説明が書かれた案内板

メハジキ

メハジキ

 

我が屋前(やど)に 生(お)ふる土針(つちはり) 心ゆも

想はぬ人の 衣(きぬ)に摺(す)らゆな

「私の家の庭に咲く土針(メハジキ)よ。本当にお前を想っていない人の衣の摺り染めに使われてはいけませんよ」

 

染料に使われるメハジキの葉の色が落ちやすいことから、移り気な男性を例えて、「本当にお前のことを想ってくれる男性でなければ、心惹かれてはだめですよ」といっているのでしょうか。

さて、メハジキは、“日本-東・東南アジアなどに広く分布します。道端や荒地に生育し、紅紫色の花を葉のわきに咲かせます。”(エバーグリーン植物図鑑)また、漢名を益母草(ヤクモソウ)といい、婦人のための漢方薬としても使われているそうです。

他にも、万葉の森の「夏のこみち」には、ガクアジサイアジサイヤマユリヒガンバナなどが、自然に溶け合うように咲いています。遠い古のひとびと時代を超えて同じ花を目にしているなんて、本当に不思議でロマンチックです。

あじさゐの 八重咲くごとく 彌つ代にを いませわが背子 見つつ偲はむ

あじさゐの 八重咲くごとく 彌つ代にを いませわが背子 見つつ偲はむ

 

ひとつの花にちなんださまざまなエピソードを深掘りしていくと、興味の幅もどんどん広がっていきます。

メハジキの花言葉:「良き願い」「憎悪」「憎しみ」

 

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万葉の植物園路( 国営飛鳥歴史公園)

 

(エバーグリーン編集部 たなか)


万葉集に登場する夏の草木花が植えられた「夏のこみち」