今回は、花の時期の芳香と晩秋から冬期に実が目立つ「センダン」を紹介します。センダン科センダン属の落葉高木で漢字名は「栴檀」と書きますが、香木として名高い白檀などが属するビャクダン科ではありません。四国・九州・沖縄など暖地の海岸近くの林内に自生する木ですが、本州では広い範囲でよく栽培されているようです。
果実や樹皮は昔から疝気(せんき)や腰痛および軽い風邪用の民間薬として利用されていたことから本州各地で栽培されたほか、街路樹や公園などに植えられたとされています。山梨市内のものも、その昔に植えられたものが元気に生き延びていると考えられます。
この写真は街なかのあまり使われていない道路の脇に植えられたセンダン7本のうちの1本で、樹高は3~4mあります。冬期にかたわらを通ると、実が目立つので気になっていました。それ以外はすべて我が家近くの里山にあるセンダンで、樹高は3m弱と低い樹です。
数年前からウォーキングコースとして利用する道端にありますが、手入れがされていないのかほかの蔓植物などが絡まっていることなどもあって、最初に気付いたのは下の写真のような落葉後でした。
海から遠く離れた甲府盆地にセンダンがあるとは思っていなかったことや、花を確認する機会が少なかったことなども特定するのに時間を要した原因の一つかもしれません。花の時期は5~6月ですが、だんだん早くなってきている感じがします。木のそばを通るとよい香りがしますよ! たくさんの蝶や蜂などが蜜を求めて飛び交っています。
10月頃に葉が落ちて実が熟すといわれていますが、山梨市内のセンダンの実は秋が深まってから熟すようです。冬に近くを通るとヒヨドリなどの野鳥が実を啄(ついば)んでいるのをよく見かけます。近くの野山にはほかに食べられる実は残っていないのでしょうね。
森林セラピー的には香りはもちろんですが、若い時期の枝や葉にある毛が成長につれてなくなること、結実から成熟・乾燥に至る実の触角がおもしろいので、個人的には関心を深めている木の一つです。
(山梨市森林セラピー推進協議会 森林セラピスト / 四十物治夫(あいものはるお))