夏の中頃になると拙宅の庭に必ず生えてくるザッソウ、それがクワクサです。適度に湿り気がある明るい場所が好きなようで、特に鉢植えやプランターのなかで発見することが多いです。外見は特に目立った特徴は見られませんが、花の咲く時期やタネができる頃におもしろい動きをします。
クワクサは道端や畑などに生える一年草で、見られる時期は夏から秋。冬には枯れてしまいます。葉っぱは縁がゆるくギザギザになり、形が樹木のクワ(桑)の葉っぱに似ているので、この名前があります。表面に粗く毛が生えているので、触るとザラザラしています。
花の咲く時期は夏の終わりから秋で、かたまり状に集まった小さな花が茎にくっつくように付きます。花には雌花と雄花があり、雌花は雌しべ(花柱)を閉じた花のすき間から伸ばし、雄花は白い雄しべを4本広げます。雄花と雌花はひとつのかたまりの中で混ざって咲きます。
目立つ花びらがなく葉の影に隠れるので、咲いていることには気づきにくいです。花を観察するときは、しゃがんで茎葉の間をのぞき込むような格好になります。
冒頭で「おもしろい動きをする」と述べましたが、そのひとつめが雄しべの動きです。雄しべは花のなかで内側に丸まって収納されており、開いたときにバネのように外側へ広がり、その勢いで花粉を飛ばします。そして、花粉を飛ばし終わった雄しべは再び丸まります。まるでおもちゃのピーヒャラ笛(吹き戻し)のような動きです。
よく見ると花粉を飛ばす前の花糸(雄しべの軸部分)は、厚みがありハリとツヤがありますが、花粉を飛ばしたあとの花糸は水分が抜けたように薄くなっています。雄しべが伸びたり丸まったりする現象は、そこにヒントがありそうです。
ふたつめの「おもしろい動き」はタネを飛ばす動きです。熟した果実を細い棒などで突くと、タネがびょーんと飛び出します。果実の一部はタネを下から挟み込むような作りになっています。果実が熟すにつれ、その部分がパンパンにふくらんでいき、内側に挟み込まれたタネがぎゅうぎゅうと圧されて外にはじき出されます。
花粉の飛散や、タネの散布を自力でやってしまうクワクサのお話しでした。
(ヤサシイエンゲイ 小林昭二)