今年の春は寒いですね。私事ですが移住して4月から水戸市の植物園・水戸市植物公園で「中の人」として生きることになりました。今までは東京近郊の植物園や野外で見られる植物を紹介してきましたが、これからは範囲を広げて関東圏内で見られる植物を紹介できたらと考えています。これからもよろしくお願いします!
さて今回の植物は、水戸市植物公園で出合って私もテンションが上がった水辺の妖精・ミズバショウを紹介しましょう。水戸市植物公園では敷地の奥の湿性花園の一角がミズバショウの群落になっていて、橋の上から水際を彩る花を楽しむことができます。
ミズバショウときくと脳内で流れるのはあの曲ですね。「夏の思い出」という曲名から開花するのが暑い時期だと勘違いされがちですが、実際の開花期は4月から5月です。高地では雪が解けてからの開花なので5月から7月に咲きますが、歌の作者はミズバショウが夏の季語になることから「夏の」思い出として尾瀬での風景を歌詞にしたようです。
特徴的な花の形が印象的ですが、水辺に佇む赤ちゃんのお包みのような白いマント部分は苞という葉の一部で仏炎苞(ぶつえんほう)と呼ばれます。そのなかにトウモロコシを小さくしたような黄色い本物の花が立っていますが、これは集合マンションのようなもので粒々一つ一つが花なのです。
ミズバショウは水を好む多年草で、果肉がスポンジ状です。これは種子を水に浮かせて拡散させやすくなっているからで、条件の良い場所にたどり着いて芽吹けば3年ほどで開花する株に生長します。
水辺の妖精と紹介しましたが、ミズバショウの見どころは開花後です。青々とした葉が花後に出てくるのですが、ぐんぐん生長して大きくなると約1mにもなるのです。花の時期を知らずに葉だけを見ると爽やかな歌に登場する花だとは思えないお化けのような植物なので「これがあのミズバショウなの!? 嘘だ!」と、楚々とした妖精の姿とはかけ離れた巨大さに圧倒されてしまいます。ミズバショウを観賞されるときにはぜひ花だけでなく葉の大きさも楽しんでくださいね。
(水戸市植物公園 宮内元子)