仕事をかねて沖縄へ。そこで見つけたのが沖縄の伝統的な縁起菓子のひとつムーチー。今回は縁起菓子のお話しをお届けします。
「お~い! 園芸、植物の話。餅は関係ないぞ~」と編集担当から声が聞こえそうですね。そこで、まずはこのムーチーに深い関係がある植物からご紹介しましょう。その植物というのはショウガ科のゲットウ(月桃)。沖縄本島ではサンニン、奄美大島ではサネン、種子島では、シャニンと呼ばれています。
ムーチーを食べてみる
そもそもこのムーチーは、沖縄では旧暦の12月8日に子どもの無病息災や家内安全を願って食べる縁起菓子。ゲットウの葉に包んだムーチー作り、子どもの年の数だけ繋げ、天井から吊るすのだとか。そんなムーチーですが、今では沖縄の代表的なお菓子としても知られ、公設市場(那覇市)の付近の商店街で買うこともできました。お店からはゲットウ独特のスパイシーな香りがして、店頭にはプレーンだけでなく、黒糖・紅芋・ヨモギなども並んでいました。
食べ方は葉をむいてパクリ。なんともなつかしい味がします。餡がない柏餅といった感じですが、柏餅よりモチモチとした食感。そしてなによりも、ショウガのような香りが口のなかいっぱいに広がります。奄美大島出身の某社の編集者によると「これ、よくばーちゃんが作ってくれたんだ」そうで、自宅でもゲットウの葉があればかんたんに作ることができるようです。通販で「ムーチー粉」で検索してみると、500円程度から販売されておりなかにはゲットウの葉が一緒に売られているものもありました。
ムーチーで使われるゲットウには美容効果も!
ゲットウ。最近はハーブやパワーフードとしても人気が高まり、化粧品の成分などでもゲットウエキスの文字を目にすることがあります。ちなみに、そのパワーはポリフェノールとコラーゲンの減少を抑えるとされる不揮発成分カワイン。このため、美肌のためにも役立つのだとか。スキンウォーターの作り方はゲットウの葉を刻んで作ります。また、葉を乾燥させたものはお茶としても使うことができるのだそうです。
最後に、ムーチーに関係する民話に関して
ムーチーは漢字で『鬼餅』。その由来を調べて見ると、教育部 市立郷土博物館文化財係が提供している文献によると、首里の金城がルーツで、両親を失った兄妹の成長した妹が嫁に行き、残された兄が鬼になってしまい、妹は鬼になった兄に瓦を包んだ餅を作り、山に誘いこみ殺してしまうという悲しい話。
ですが、鬼を退治した餅のことが「チカラムーチー、ホーハイムーチー、カリームーチー」と呼ばれ、今でもムーチーを炊いた煮汁は「ウネーフカ フコーウチ(鬼は外、福は内)」といって屋敷の周囲にまき、ムーチーを包んだカーサ(サンニンの葉)は十字に結んで人の出入りする入口や軒先に吊るし、鬼が家のなかに入ってくるのを防ぐようになったとされているそうです。
(藤依里子 園芸文化協会会員/グリーンアドバイザー)