今回は、林内の沢沿いなど比較的湿ったところに群生する「ハシリドコロ」を紹介します。
ナス科ハシリドコロ属の多年草で、本州から九州までに分布します。誤って食べると幻覚症状を起こし、苦しんで走り回ることからその名が付いたといわれています。怖いです。
花期は4~5月で典型的な春の野草です(夏以降は枯れてしまいます)。葉が大きいことと群生しており葉が大きいので、すぐに目につきます。
上の写真のように暗紫色(あんししょく)の花が垂れ下がっているがふだんから見られる光景ですが、あるとき“なにか違うな?”と思い花の香りを嗅いでみようと近づくと、黄色が目立っていました。よく見ると花が上を向いていたのです。香りはそっち除けでシャッターを切りました。微かですが、甘い香りがします。周辺の別の山で観察すると、そこでも同じく上を向いている花を見かけました。
さらに、花が上を向く時間帯があることもわかりました。おおよそ11時前後に上向きになり、午後やその他の時間帯は下向きに戻っていました。理由は明確ではありませんが、これも「ハシリドコロ」の生き抜くための知恵だと推測しています。
有毒植物なので鹿も見向きしません。根は猛毒で、ヤマイモ科のオニドコロに似ているので誤食されることがあるそうです。また、土から芽を出すときはフキノトウに形が似ていますので間違わないように注意してください。
みなさんも自然の不思議・植物の不思議に触れてみてはいかがでしょうか?
(山梨市森林セラピー推進協議会 森林セラピスト / 四十物治夫(あいものはるお))
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