コブシはモクレン科モクレン属の落葉高木で、沖縄を除く日本全国に分布し山地などに生えます。
花などに関する詳しい内容は、エバーグリーン植物図鑑のコブシのページを参照ください。次の写真は、殻を被ったコブシの果実です。
6月下旬頃から実が成長していることを確認できますが、緑色で葉っぱに隠れているため、目に留まりやすくなるのは色が変る8月に入ってからです。果実は長さが5〜15cmの中に種子がたくさん詰まった集合果で、写真のように形はさまざまです。多くは幼な子の握り拳状になるため、この名前が付けられたともいわれています。9月頃から桃色や赤色になった外殻が裂けて、その中からたくさんの赤色の種子が白い糸にぶら下がり、まもなく落下します。
10月下旬には果実と葉は落ち、来春への準備に入ります。コブシの越冬対策の一つが“ネコヤナギ”のようにフカフカした羽毛のような芽です。
私たちが行なっている森林セラピーにおいてコブシは大切な植物の一つです。花の蕾(乾燥したもの)は生薬の「辛夷(こぶし)」として利用されます。薬効は鎮痛、鎮静で鼻炎、頭痛、めまいなどに効能があるといわれています。慢性鼻炎、風邪(気味も含む)、花粉症などのお客さんを数多く案内しましたが、その行程中少なくとも3、4回以上コブシの香りを嗅いでいただき、その方の症状に効果があるだろうと思われるその他の植物(これは企業秘密です。笑)の香りも数種類以上提供しながら森を歩いた後は、ほとんどの方がその効果に驚かれていました。
「途中から気にならなくなり、終る頃には鼻炎(風邪、花粉症)であることをすっかり忘れてしまった」「鼻水、クシャミ、咳が止まって楽になった。嘘のよう!」「鼻がすーっと通った感じがして気持ち良い」といった感想を多くいただきます。もっとも、森を歩き自然に浸ることで気分転換になっていることが大きいと思ってはいますが……。
コブシの花は良い香りで知られていますが、枝や葉や種子や芽も香ります。ほかのモクレン科の樹との香りとの違いを見つけるのもおもしろいでしょう!芽、葉(若葉と成長葉と黄葉)、果実の触覚も新鮮です。葉っぱは噛むと辛いです。ただし、黄葉した葉はまずいのでおすすめしません。白い可憐な花を愛でたり、木漏れ日や風に揺れる葉音が五感をくすぐってくれますよ!
このように、コブシは春夏秋冬を通して森林セラピーには不可欠の樹の一つなのです。この魅力を体験されることを、ぜひおすすめします。
(山梨市森林セラピー推進協議会 森林セラピスト / 四十物治夫(あいものはるお))
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