今回は“春の妖精”と呼ばれる「カタクリ」を紹介します。
ユリ科カタクリ属の多年草で、北海道から九州に分布し山野の林内に群生します。雪の多い地域では大群生が見られます。甲府盆地周辺は近年雪が少ないせいか、あまり群生は見られないのが残念です。また、四国や九州ではめったに出あえないようです(私も見かけませんでした)。
葉は花茎の下部にふつう2個付きます。長い葉柄は地下に埋まっていて見えません。葉身は黄緑色で長さ6〜12cmの長楕円形をしており、黒い斑点があるのでよく目立ちます。
花期は4〜5月で、高さ10〜20cmの花茎の頂部に1個付き、下向きに開きます。朝日を浴びると花が開きだし、次の写真のように花被片が交差するほど強く反り返ります。雨の日や薄暗い曇天の日などは、花被片が閉じたままのこともあるそうです。花被片は紅紫色で長さ4~5cmの被針形です。
最後の写真は、「カタクリ」の実です。この朔果が成熟するころは花茎が30cmくらいまで延びて、地面に倒れます。円形の3稜形をしています。緑色がやがて白っぽく乾いてきます。そして、先の方が裂けて3室内の種子がこぼれ落ちてきます。
片栗粉のもとになった鱗茎(球根)は、花茎の地下深くに埋もれています。最近の片栗粉はジャガイモやサツマイモから造られているようです。
カタクリは「群落」に近づくと甘い香りが漂ってきます。「単発」の花の場合は、顔を近付けることで香りを確認できるでしょう。このカタクリの花には、マルハナバチなどが蜜を求めてやって来ますので、ハチなどの邪魔をしないように香りを楽しんでください。
(山梨市森林セラピー推進協議会 森林セラピスト / 四十物治夫(あいものはるお))
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