店頭では新年気分も終わり「バレンタイン」訴求に代わり、チョコレートフィーバーが熱を帯び始めました。最近はただ甘いだけのチョコレートだけでなく、カカオ含有量が多い苦味の強いチョコレートも一般的になってきましたね。チョコレートといえばカカオですが、そもそもカカオってどんな植物? どんな花が咲いて、どんな実がなって、私たちはチョコレートとしていったいカカオのどこを食べているのでしょう。
カカオはアオイ科の樹木です。原産地は熱帯アメリカで、大きくなると6mにも生長します。大人の親指の爪くらいの大きさの白い星のような花が、太い幹から直接短い茎の先に咲く「幹性花」で、そのさまは初めて見ると異様な感じがします。
しかし、花後に実る果実は白色・緑色・黄色・茶色の500mlのペットボトルぐらいの大きさで、ラグビーボールのような形をしておりずっしりと重いのです。これがもしも細い枝先にたわわに実り、熱帯地方で毎日のように突然降り注ぐスコールの激しい雨に打たれボキボキ折れてしまったら、どれだけたくさん枝があっても足りません。熱帯の樹木特有の幹性花というシステムは理に適っているといえるでしょう。
ラグビーボール状の果実を二つに割ると、中にはパンヤ状の果肉と共に大人の親指先一関節分くらいの大きさの楕円形の種子がびっしり並んで詰まっています。完熟したカカオの果肉はとろける感覚で甘く、現地の子どもたちにとってはうれしいおやつです。チョコレートの材料となるのはカカオの種子の部分。これを我々はカカオ豆と呼んでいるのです。
古代アステカ文明ではカカオ豆が通貨として使われていました。カカオ豆10粒でウサギ1羽と引き換えになったそうです。現在では甘く調理したお菓子が一般的ですが、南アメリカの人々にとってカカオは呪術に用いられる聖なる食材であり、高級品でした。ヨーロッパにもたらされた後に、加糖した嗜好品になったのです。日本への導入は大正時代中期だといわれています。
現代、カカオはプランテーションで同じ品種が大量栽培されている一方で原生地の熱帯雨林が伐採され、野生のカカオの品種は減少しています。もしもカカオに強力な病害虫が発生した場合、絶滅する恐れもあります。甘いチョコレートの実情にはこういった苦い現実があるのです。