誰もが聞いたことがあると思われる「ヒノキ」を紹介します。漢字で「火の木」と書きます。
ヒノキ科ヒノキ属の常緑高木で、幹は高さ約30m、径は90〜150cmに達します。
福島県南部から九州屋久島に分布し、山地に生えます。植林などで、平地でも見られます。
樹皮は灰褐色から赤褐色で、縦に裂けて薄く長い破片状に剥がれます。この樹皮は、全国の社寺の屋根葺(桧皮葺)材料として重用されています。木材は古くから“桧舞台”といわれるほど最良の建築材として有名ですが、ほかにも用途が広い樹です。
葉は表裏とも緑色ですが、裏側の葉の合わせ面に白色の気孔群があってそれらがY字状を呈しているのが特徴です。
花期は4月ですが、花片がないのでどれが花なのかわかりにくいです。下の写真の葉先の茶色い部分は雄花の蕾です。約10日後には紫色を帯びていました。どちらも花弁がなく目立たないことから気にもかけられませんが、小さな緑の毧果が成長し始めて「ああ、これが雌花だったのか」と理解されることが多いです。
毧果は10~11月に熟して赤褐色となります。1枚目と下の写真は9月上旬のもので、斑な赤みが見え始めています。球形で、径は8~12mmほどに成長します。
この写真は熟して落ちた毧果です。仲間うちでは、「ヒノキボックリ」と呼んでいます。殻が大きく裂けて、種子の一部が飛び出しています。
「ヒノキ」の葉や実(毧果)は、森林セラピーを体験していただく際に必ず採用するものの一つです。本州にある針葉樹のなかでも多くの揮発性香り成分(フィトンチッド)を有する樹です。また、自律神経バランスを整えてくれる効果が期待できます。
お客様の感想は、「この香りは好きです」「何処かで嗅いだことがあるけど、桧風呂?」「何故か眠気を催してきた」というものが多いです。顔を近づけるだけで香りを確認できない場合は、葉を揉んだり、毧果に爪を立てたり、裂け目を利用して細かく砕くとハッキリと香りを嗅ぐことができます。
(山梨市森林セラピー推進協議会 森林セラピスト / 四十物治夫(あいものはるお))
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