夏です。キンチョーの夏、日本の夏。アバンチュールの夏、冒険の夏。一瞬の夏、一生の夏。ああ、どれにしようか迷っちゃう? いいえ、園芸家は迷ってはいけません。我々が今の季節にやるべきことは……切り戻しです。切り戻しの夏です。
いい感じに伸びた植物たちをバッサリ切る「切り戻し」、またの名をを「ピンチ」ともいいます。植物にとってはせっかくここまで伸びてきた枝葉をばっさり切られてしまうピンチではありますが、人間にとってはチャンスなのです。
切り戻しとは文字通り「切って戻す」園芸作業です。2/3程度草丈を低くしたり枝葉を間引くことは、せっかく伸びた植物にとってかわいそうな行為に思えるかもしれませんが、植物にとっても良い効果があるのです。植物には「頂芽優勢(先端の芽に栄養分を優先的に送る)」という特性により、先へ先へと伸びていく習性があるのです。
- 風通しがよくなることで病害虫を防ぐ
- 先端に行きがちな養分を株全体に回せるようになるので、全体的に密に育つ
- 一番暑い時期に花や実をつけるのをいったんお休みして株を養生させ、そこからもう一度花や実をつけやすくする。
夏の植物は成長が早いため、しっかり根が張っていれば切り戻してももう一度ぎっしり茂る程度に復活が可能です。頂芽優勢の習性は、切り戻さないと株の根元に日光が当たらず根元の葉が黄色くスカスカになったり、ゴーヤやアサガオのような蔓性植物だと上の部分ばかりが茂って、禿げあがったような草姿になってしまうこともあります。フェンスや蔓性植物用ネットからはみ出た部分を切り戻すことで、低い位置の芽に栄養分が供給されるようになるので全体的に密に成長させることができるのです。
夏の暑さが人間にとって耐えがたいものであるように、植物にとってもかなりしんどい環境です。一番暑い8月中旬から9月上旬に花や実をつけるのをいったんお休みさせてやれば、9月中旬からさらに美しい花を咲かせたり、充実した果実を実らせてくれます。人間も植物も夏休みが必要というわけですね。