キキョウソウは初夏から梅雨頃にかけて、道端や荒れ地などで見られる北アメリカ原産の帰化植物です。現在は勝手に生えてくるザッソウですが、古くは観賞用に栽培されていたようです。キキョウのような色と形の花を咲かせるのでこの名前があります。丸い葉っぱが茎に密着して段々に付くので、ダンダンギキョウとも呼ばれます。あまり枝分かれせずに上に伸び、全体的にひょろりとした姿をしています。
似た仲間にヒナキキョウソウがありますが、こちらは葉幅が狭く先端が尖っていて、花は茎頂に咲くことが多いので、区別は付きやすいです。
花は小さいですが、上品な紫色でとてもキレイです。おしべが花粉を出して役目を終えたあと、めしべの先端が3つに開いて花粉の受け入れOKの状態になります。こうしておしべとめしべが成熟する期間をずらすことで、ほかの花の花粉を受け入れるチャンスが増えます。ほかから花粉を受け入れることで、遺伝的に多様性のあるタネができます。万が一、なにか環境の変化があっても対応できる個体が現れて、生き残ることができるかもしれません(そんな天変地異のような急変化が起こらないことを祈ります)。
しかし虫が花粉を運んでくれる保証はどこにもありません。タネができなければ、次世代を残すことができません。ですから保険として、つぼみのまま開かずにタネを結ぶ閉鎖花もつくります。ちゃっかりしています。最初は閉鎖花ばかりを付けているような気がします。閉鎖花で充分タネを作ったあと「もういいでしょう」と納得し、キレイな花をパッと咲かせるのかもしれません。
花後に長さ5mmくらいの果実ができます。形は棒状で熟すと非常に細かいタネを出します。どうやってタネを出すかわかりますか? 先端が開くとか、縦に大きく裂けるとか、そんな風に考える方も多いでしょう。
しかし答えは斜め上を行きます。側面がぺろりとめくれ上がり、開いた穴からタネがこぼれおちます。観察していた果実は、3か所に穴が開いていました。「そこからタネ出すんかい!」と突っ込みたくなるその意外性、筆者の一番好きなキキョウソウポイントです。
果実の下に付いている葉っぱがお皿のようになり、そこにタネが溜まっていることもあります。みなさんもぜひ観察してみてください。
(ヤサシイエンゲイ 小林昭二)