カラスノエンドウ、スズメノエンドウ、カスマグサ(以下、「3種」)は見違えるほど似ているわけではないですが、何か『絆』のようなものを感じさせるマメ科のザッソウたちです。
春に道端や畑、野原などで見かけますが、3種を同じ場所で見つけると、なにかが揃ったような得した気分になりそうです(筆者は同じ場所で3種揃えて見たことはありませんが)。つる性植物で、葉っぱの先が巻きひげ状になり近くにあるものに絡まります。花の形はマメ科ではポピュラーな蝶形花で、のちに豆莢(まめざや)ができます。
生育環境、季節、姿など共通点は多く、ひとつずつの特徴を語るのも楽しいですが、今回は違う視点から攻めたいと思います。テーマは「名前から見る3種の絆」です。
カラスノエンドウとスズメノエンドウは鳥の名前が共通して付いているので何となく関係性がご理解いただけると思います。しかも両方「エンドウ」って付いてるし、ああマメの仲間なのかな? くらいの想像はつきます。しかし、カスマグサはネーミング的に仲間はずれっぽいじゃないか、エンドウって付かないしそもそもカスマってなんだよ、と問い詰められそうです。
いえいえ、落ち着いてください。カスマグサは仲間はずれではございません。それどころか、カスマグサこそカラスノエンドウとスズメノエンドウをがっしりと繋げる要(かなめ)なのです。まさに三位一体のトリニティ。理由は単純明快、「カスマ」の意味がすべてを物語っているからです。ここで一問一答
Q. カスマとはなんですか?
A. カラスノエンドウとスズメノエンドウの中間(マ)という意味です。
ホントですか!? という声が聞こえてきそうです。これだけでは説明不足ですね。冒頭で述べた名前に込められた3種の深い絆がまったく解き明かされていません。
さあ、ここからが解答編です。
まず、1.カラスノエンドウ→2.スズメノエンドウ→3.カスマグサの順番で命名されたと思われます。なんでそんなことがわかるのか? まあまあ、あわてずに……。
カラスノエンドウは豆莢が熟すと黒くなり、その色を烏に見立てて名付けられました(諸説あり)。スズメノエンドウはカラスノエンドウに似ているけども小型なので、烏よりも小さい雀の名前が与えられました。カスマグサに関しては説明したとおりで、カラスノエンドウとスズメノエンドウを足して2で割ったような中間的な姿をしているからです(個人的にはスズメノエンドウ寄りに見えます)。
実際に花の大きさで比べると、カラスノエンドウが一番大きく、次いでカスマグサ、一番小さいのはスズメノエンドウです。葉っぱの大きさもおおむねその順番で、名前の由来通りですね。カラスありきでスズメあり、二者がありきでカスマありといった名前の相互関係なのでした。そんなところに絆を感じるのかもしれません。さいごにひとつ、カラスノエンドウは漢字を当てると「烏野豌豆」(烏+野豌豆)で、「烏の豌豆」ではありません(スズメノエンドウも同様です)。
(ヤサシイエンゲイ 小林昭二)