散歩やハイキングの途中、名前の知らない花に目を惹かれたとします。なんという名前なのか、どんな性質を持っているのか気になるでしょう? 筆者はとてもとても気になります。
この名も知らぬ花の正体、みなさんならどうやって調べますか? 真っ先に思いつくのがインターネットですね。ウェブサイトを検索する、SNSで聞いてみるなど、とても便利でお手軽です。
しかし、私は本の植物図鑑(以下、植物図鑑)で調べるというアナログ的行為も魅力的だと思うのです。ページをパラパラとめくっていて「あ、こんな花もあるんだ」と目当てのページじゃないところで目を留めて読みふけてしまうことが往々にしてあります。こういう回り道も含めて、本で調べるのも楽しいですよ。今回は筆者が愛用している植物の図鑑を紹介します。
文一総合出版 ポケット図鑑 日本の野草 300
「冬・春」編と「夏・秋」編があり、その植物が見られる季節別に分けられています。コンパクトサイズで携帯しやすいので、散歩の際は季節に応じてどちらか1冊を持ち歩いています。検索用の見出しが花の色別にまとめられており、該当する花色の見出しから探せばよいので、短い時間で調べることができます。道端にしゃがんで観察する姿は端から見るとやや怪しいので、調べる時間は短いに越したことありません。
1ページで1つの植物、写真も全体像のほか花や葉っぱのアップも載っておりコンパクトな割に上手くまとまっています。この図鑑に限らず、花色別になっているものは直感的に調べられるので、最初の一冊として最適だと思います。
文一総合出版 ポケット図鑑 都市の樹木 433
公園や街角に植栽、もしくは自生している身近な樹木が紹介されています。筆者は街なかを歩いていると、そのあたりの街路樹がとても気になるのですが、樹木を憶えるのが得意ではないのでこの図鑑もよく持ち歩きます。
葉や花、実の写真が詳細に載せられており、それぞれの樹木の特徴がわかりやすい構成になっています。検索用の見出しが葉の形や付き方別になっており、慣れると使いやすいです。樹木ごとの解説もわかりやすくおもしろいです。
山と渓谷社 山渓ハンディ図鑑1 野に咲く花 増補改訂新版
サイズは比較的コンパクトですが、フルカラーでボリュームがありずっしりと重量感があります。持ち歩けないことはないですが、筆者は卓上で使っております。1000種以上の野草が収録されています。植物の特徴が写真とともに細かく解説されており、似ている植物を判別する際に役立ちます。写真が大きめでどれも美しく、1ページずつめくって調べるのが楽しくなる図鑑です。少し本格的な植物図鑑を求めている方にオススメです。
北隆館 新牧野日本植物圖鑑
植物図鑑の代名詞ともいえる大型の図鑑で、収録されている種数が5000種を超える圧倒的ボリュームです。1つの植物につき1枚の図と説明文で構成されたシンプルなレイアウトでわかりやすいです。改訂を重ねても受け継がれる牧野植物図鑑のレイアウトは安定感がありほっとします(個人の感想です)。図は小さめのサイズですが非常に緻密で植物の特徴がよく表されていて、個人的には写真よりも好みです。
属や種を特定するための検索表がついていますが、こちらは上級者向けです。どちらかというと名前のわかっている植物の素性(?)を調べるのに適しています。可能であれば持っていたい一冊です。
以上4つの図鑑を紹介しました。本屋さんやネットで植物図鑑を探すと、バラエティーに富んだよりどりみどりのラインナップであなたを出迎えてくれるでしょう。文庫サイズのポケット図鑑は持ち歩くのに便利だけど情報量が少ない。大きな図鑑は内容が濃く載っている植物の数も多いけれど、検索しづらい、値段が張る。など一長一短。一冊ですべてまかなえる図鑑はありません。気に入ったものを選んで使い分けるのも、ひとつの方法です。
自分で調べて憶えた植物はなかなか忘れません。そうやって回を重ねていくと、見た目の雰囲気でその植物が分類されている科や属のアタリがつくようになります。そうすると、植物図鑑もより使いこなせるようになります。まず一冊から、植物図鑑をはじめてみてはいかがでしょう?
(ヤサシイエンゲイ 小林昭二)