道路の隅っこや隙間からはいろいろなザッソウが生えてきます。ひっそりして目立ちにくいものから、堂々と人の背丈を超えるものまでその姿はさまざまです。あたりまえのように生えているそれらのザッソウですが、じっくり観察すると個性的な特徴が見えてきたりして非常におもしろいものです。
お金もかからないし、好奇心も満たせ、そのうえ植物にも詳しくなれる。路傍のザッソウ観察はとても有益な趣味だと思います(笑)。
さて、今回紹介するザッソウ「アメリカオニアザミ」は主に初夏から秋に見られます。
筆者の住居の近辺では、道端のアスファルト舗装の隙間や荒れ地によく生えています。
膝上くらいの高さで花を咲かせている株もあれば、人の背丈くらいに生長している株もあります。よく枝分かれして比較的大きく茂ります。
葉っぱや茎、花にいたるまで鋭いトゲに覆われています。この禍々(まがまが)しい見た目に、とりあえず一歩引きます。触ったら痛そうな雰囲気満々です。実際とても痛いので、見つけても触れないほうがよいです。
花は紅紫色で大きくて目立ちます。一輪の花に見えますが、ちいさな筒状の花がたくさん集まってひとつの花を形作っています。花の下部分(総苞)は鋭く尖った総苞片で覆われています。総苞はアメリカオニアザミが最もいかつく見える部分だと思います。
馴染みのある方は多くないかもしれませんが、ゴボウの花(下の写真)にそっくりです。ちなみにアメリカオニアザミもゴボウもキク科の植物です(属は異なります)。
花の咲き終わったあとはタンポポのような綿毛(冠毛)の付いた種子をつくります。種子はとにかく大量で、風に乗って飛んでいくのですが、タンポポが「ふわっ」とやさしく舞って飛ぶ感じなら、アメリカオニアザミの場合「ぶわぁっ!」と盛大に飛び散るイメージです。
大量に散布される種子のわりに、花が咲く大きさにまで生長するものはかなり少ないようです。そうはいっても、いろいろな場所であたりまえのように見かけるので、繁殖力は無駄に旺盛といえます。
アメリカと名前が付いていますが、原産地はヨーロッパです。アメリカから輸入された穀物や牧草に混ざって日本に入ってきたとされるので、この名前になったのでしょう。
昭和20年代以降、各地で根付いて勢力範囲を広げ、現在では北海道~四国まで分布しています。北海道は特に多く家畜に害を及ぼす植物として問題になっています。環境省の生態系被害防止外来種リストに掲載されています。要するに駆除した方がよいザッソウということなのでしょう。
花はキレイですが、ありがたくない事情も抱えたアメリカオニアザミでした。
(ヤサシイエンゲイ 小林昭二)