今回は、丘陵帯から山地帯の林内に生える「タカノツメ」を紹介します。別名はイモノキ。ウコギ科タカノツメ属の落葉小高木で、北海道南部から沖縄を除く日本全国に分布します。日本特産種で、タカノツメ属はこの1種のみです。
タカノツメは漢字で「鷹の爪」と書きます。冬芽の形が鷹の爪に似ていることからつけられました。一方、別名のイモノキは枝がもろいことがその謂れとされています。
山梨県内はもちろん、山梨市内の西沢渓谷や棚山を含めた近辺の山々でも、タカノツメはよく見かけます。黄葉するまでは目立ちませんが、春の若芽のときは森林セラピーで利用しています。若芽は香りが強く、森の香りの一つとして嗅いでもらうことが多いです。
また、『山菜としても食べられますよ』と紹介すると、『香りが良いのでおいしいでしょうね』と返ってきます。筆者の経験からは、コシアブラ(若芽)の天ぷらの方がおいしいと感じますが、みなさんはいかがでしょうか?
花期は5〜6月ですが、上の写真のように目立たないことと、ほかの草花などが目を惹くのためタカノツメに注目することは少ないです。果実は夏頃から形がハッキリしてきますが、次の写真のように9月上旬では緑色でまだ熟していません。10月になってから実は黒く熟します。
花の少なくなる晩夏から、再び森林セラピーに利用する機会が増えてきます。葉っぱの表と裏の触覚の違いや果実など手触りがおもしろいので、一度試してみてください。
上の2枚の写真でもわかるように、葉っぱの表側は光沢があります。黄葉する前の緑色の時期も葉の表と裏の違いがハッキリしており、裏側は光沢がなく少し白みを帯びています。
このタカノツメも落ち葉が目立ちます。上記最後の写真のように落下直後はきれいな黄色を保っていますが、同写真の右上の葉のように茶色く色が変っていきます。そして、やがて土に還るのです。晩秋の山道などで、このような光景に出合うかも知れませんね!
(山梨市森林セラピー推進協議会 森林セラピスト / 四十物治夫(あいものはるお))