「薬草って身近にあるんだなぁ」と実感
某日、日本大学薬学部薬用植物園において、日本民間生薬検定(筆者、いちおう中級デス)の薬草見学会が行われましたので参加しました。こちらの薬用植物園、面積は約12,000平米で、国内外の薬用植物約1,000種を栽植。標本園には医薬用植物区、和漢薬植物区、民間薬植物区、香料染料植物区、漢方植物区、くらしの植物区、木本植物区、つる性植物区、水生植物区のなどがあり、ほか、温室(熱帯植物区)などを見ることができました。ちなみに、日本大学薬学部薬用植物園は、通常は一般の立ち入りはできませんが、薬草教室等のイベント時には見学することができるようです。
そもそも生薬ってなに?
生薬とは、昔から民間の間で受け継がれてきたおばあちゃんの知恵袋的なもので、植物を中心に、昆虫、鉱物などを利用したセルフメディケーションのひとつです。そのため、効果・効用は人それぞれ。科学的な根拠があるものもあれば、単なるおまじない的なものもあるようです。
また、漢方薬と生薬はある意味で似て非なるもので、漢方薬は患者の症状に従って作られたクスリでその配合などは厳密ですが、民間生薬は経験的、伝統的に伝わった先人たちの知恵。「コレが絶対に効く!」という概念はありませんので注意して用いるようにしましょう。もちろん、民間生薬なので、薬用成分が含まれているため口にする場合は個人の責任で、また人によっては副作用を起こすケースがあることも忘れないようにしたいものです。
ユキノシタの花びらの斑点は全部異なる
筆者が見学会に参加した日(2023年5月21日)は、ユキノシタ(ユキノシタ科)の花を見ることができました。見学会の講師を務めてくださった先生の話では「花びらの小さな斑点は花によって異なるんだよ」のひと言で、はじめてじっくりと見た筆者でした。よく見ると本当に斑点の位置に異なりビックリしました。
ちなみに、ユキノシタは葉を天ぷらなどにして食べることができますが、民間生薬では切り傷の化膿、やけど、漆かぶれ、中耳炎、扁桃腺、腫れ物などで用いられます。また、日陰などでもよく育ちますのでシェードガーデンなどに利用するのもいいでしょう。日陰といえば、あのドクダミ(ドクダミ科)は生薬名では十薬と呼び、センブリ、ゲンノショウコと並ぶ日本三大薬草のひとつとしても知られています。
もっとも印象的だったヒキオコシ
ヒキオコシ(シソ科)の別名は延命草。その名(ヒキオコシ)の由来は、倒れた病人を起こすという意味からだとか。また、弘法大師とも関係が深く、死ぬほど苦しんでいる人に弘法大師がこの食べさせたところすぐに治ったことから延命草とも呼ばれているとか……。というワケで、薬草植物園内で「食べたい方はどうぞ」の講師の声で、即反応でパクリ。その苦さ目が覚めるほどです!
この苦みが、ストレスからの暴飲暴食の胃の不調に役立つと市販もされているほどパワフル。薬草園だけで目にする植物ではなく、日当たりのよい、やや乾いた山野で見ることができるのだとか。キャンプや山歩きで気分がすぐれなくなったときなど、知っておけば役立つかも知れない生薬のひとつ。シソ科のハーブ、レモンバーム(コウスイハッカ・メリッサ)ともどこか似ているように思いました。
葉の形状などはよく似ていますが…。レモンバームは苦くはありません。
薬草は身近にある
薬草や生薬は先人の知恵。多くのものが「雑草」とひとくくりにされ、抜かれたり、刈り取られたりしているのかも知れませんね。前にも触れましたが、現在放映中の朝ドラでも「雑草という名の植物はない」なんてことが言われており、これからのキャンプシーズンなど、ちょっと知っておくと役立つ植物もあるかも知れませんね。
(日本民間生薬検定(中級)・グリーンアドバイザー 藤依里子)