春の中頃、日当たりの良い野原などで一斉に黄色い花を咲かせるウマノアシガタ。あたり一面が黄色く染まるくらい、広い範囲で茂ることもあります。日を追うごとに強くなる日差しを浴びてキラキラと輝くその花姿は、初夏もそう遠くはないことを教えてくれます。ザッソウですがあえて野草といいたい! そんな植物です。
葉っぱの形がウマの足形に見えるのでこんな変わった名前が付きました。しかし、深く切れ込んだ葉っぱからは、U字の馬蹄形を想像するのは難しいです(個人的には似ているとは思えません)。新牧野日本植物圖鑑に「遠目からみると円形に見える」と書かれているので、見方に少しコツがいるのかもしれないとさっそく実践してみましたが、遠目で見ても切れ込みのある葉っぱです……。
英語で通称「バターカップ(buttercup)」と呼ばれる植物のひとつで、花色と形からきています(バター色でカップ形の花)。
別名キンポウゲとも呼ばれますが、もともとこの名前は八重咲き種のことを指していたそうです。ウマノアシガタは一重咲きなのでそれと区別するための名前だったのでしょうか? キンポウゲは漢字で書くと「金鳳花」、通りのよいキレイな名前です。花色からこのような名前が付いたようですが、どうしてこちらが正式和名にならなかったのか。
日当たりの良い草地や土手などで4月から5月頃に見ることができます。多少湿り気のある場所を好み、水辺に近いところで見ることもあります。多年草で、毎年同じ場所でみることも多いです。草丈は60cmくらい、上の方で枝分かれして先端に直径2cmほどの黄色い花を咲かせます。花びらは5枚で丸みがあり可愛らしいです。花の表面はプラスチックのようなやや人工的な光沢を放ちます。本物かどうか思わず触って確かめたくなります。
この花びらの光沢は別にウマノアシガタの専売特許ではありません。身近でみられるザッソウなら、近い仲間のキツネノボタンやタガラシも黄色で同じような質感の花を咲かせます。
前述したこととかぶりますが、この光沢が太陽の光を反射してキラキラ輝くところが素敵です。開花時は晴天の下で日差しを浴びた姿を見てほしいものです。
(ヤサシイエンゲイ 小林昭二)