今回は、山地から亜高山帯の草地や林縁に生える「オトギリソウ」を紹介します。オトギリソウ科オトギリソウ属の多年草で、北海道から沖縄まで日本全土に分布します。漢字で弟切草と書きます。
オトギリソウは盛夏を代表する山野草で、強い日差しを浴びてキラキラ輝いています。草原や林縁でも見かけますが、やはり下の写真のような殺伐とした環境で力強く生きているのが印象に残ります。特に山頂直下や急峻な岩場など、何らかの目標ポイント近くでこの花を見かけると、『もう少しだ、頑張れ!』と背中を押してくれているといつも感じます。このような場所で花をカメラに納めるために、躊躇なくペースダウンできることでホッと一息付けるのがうれしいですね!
花期は7〜8月ですが、写真の場所はいずれも亜高山帯なので、7月下旬から8月上旬が見頃になります。7月に入ると山地の草原や林縁などでもよく見かけますが、写真を撮る気分にならないのか、ほとんど残っていません。
オトギリソウは変異種が多い野草ですが、山梨県を含む本州中部地域の亜高山帯から高山帯まで生息するもので、シナノオトギリ(信濃弟切、別名:ミヤマオトギリ/深山弟切)と区分して呼んでいるものがあります。信濃地方に多いことから名がつけられました。
葉が薄く、透かしてみると明点があるのがシナノオトギリの特徴の一つです。薄い葉でも明点がないものや、少し厚い葉でも明点があるものなど、見分けるのは困難です。個人的には、あえて見分けないようにしていますが……。このように見分けが大変難しい、紛らわしい種でもありますので今後の研究に期待したいと思います。
弟切草は、ある鷹匠が秘伝薬として鷹の傷をその葉や茎などを用いている、ということを弟が漏らしたことに激怒して弟を斬り殺したこという伝説から、この名がついたといわれています。現在でも、全草が血止めなどの薬草として利用されています。
(山梨市森林セラピー推進協議会 森林セラピスト / 四十物治夫(あいものはるお))