秋、見上げるとさまざまな木々が錦織る紅葉の季節です。見下ろすとザッソウも紅葉していたりします。今回は、秋になると筆者が必ず見たくなる「コミカンソウ」というザッソウを紹介します。
コミカンソウはミカンソウ科(コミカンソウ科)※1 の一年草で、本州、四国、九州、沖縄に分布します。夏から見られるのですが、筆者にはなぜか秋のイメージがあります。
道端や畑地など身近な場所に自生するザッソウですが、探して見つからないことも多々あります。ありふれているようで、生えている場所は案外少ないのかも知れません。アスファルトのすき間からちょこんと1本だけ生えている孤高(笑)のコミカンソウもあれば、マンションの壁際でわいわい群生しているものもあります。図鑑では草丈10cm~40cm※2 とありますが、筆者は大きくてもせいぜい20cm程度の株しか見たことがありません。
直立して伸びる1本の主枝から、横向きに伸びる小枝をややまばらに出します。小枝には丸みのある小さな葉が左右交互に行儀よく並びます。何となく特徴的な枝の伸ばし方です。
日が暮れてくると左右の葉が合掌するようにピタリと閉じます。夜は閉じたままで、日が昇ってくると再び開きます。葉が閉じた状態の株は全体的にほっそりと見えます。
花は雄花と雌花があり、葉の付け根にくっつくように咲きます。花は1mmほどと非常に小さく、肉眼で確認するのは困難でルーペ必須です。花は葉の並び方と同じように行儀よく、横枝の先端に近い位置に雄花、つけ根に近い位置に雌花を咲かせます。
コミカンソウの最大の魅力は赤く色づく果実です。こちらも葉っぱや花同様、行儀よく実がならびます。直径2mm~3mmくらいで赤オレンジに色づき、表面は細かいつぶつぶで覆われています。その姿は一言で言うと「かわいい」です。しかも、小枝の下にぶら下がるように行儀よく実る姿も高ポイントです。筆者がコミカンソウを秋のイメージでとらえてしまうのは、この色づいた果実が「実りの秋」を連想させるからかもしれません。
上から見ると、果実は葉っぱの影に隠れて愛でることができないので、自ずとしゃがみ込んでのぞきこむ姿になります。はたから見ているとかなり怪しげなカッコウです。
ここまで読まれたみなさまなら、コミカンソウの名前の由来にピンときたのではないでしょうか?
そうです! 果実がミカンをごくごく小さくしたような姿だからです。しかしその実に果肉はなく、中身はタネに占領されています。
みなさんもコミカンソウの果実をぜひ観察してみてください。しゃがみ込むときは、車や自転車、通行人に気をつけましょう。環境や場所にもよりますが、色づいた果実は11月頃まで見ることができます。
※1 維管束植物分類表 (2013 北隆館) 以前の分類ではトウダイグサ科
※2 増補改訂新版 野に咲く花(2013 山と渓谷社)
(ヤサシイエンゲイ 小林昭二)