ハハコグサは道端や田畑で当たり前に見るザッソウ(雑草)です。
花どきの5月頃がいちばん目につきます。古くから親しまれており、春の七草のひとつ「オギョウ(御形)※1」とはこのハハコグサです。
冬の間は地面に張り付くように縮こまっていますが、暖かくなると茎を伸ばしてその先端に小さな花がたくさん咲きます。目立つような花びらは持っていませんが、丸みがあって可愛らしく、春めいた鮮やかな黄色で目を惹きます。
開花時の草丈は結構まちまちで、5cm足らずの株もあれば、40cmほどに成長した株もあります。発芽したタイミングや生育環境の違いでそうなるのかもしれません。
ハハコグサのなかで一番印象に残るのは、葉のさわり心地です。茎葉(けいよう)が白い軟毛に覆われて全体が銀白色に見えます。表面が滑らかでやわらかな葉の触感は楽しいので、見つけたら一度触ってみてください。
園芸では、葉が毛に覆われて銀白色に見える植物(シロタエギクやラムズイヤーなど)はシルバーリーフと呼ばれ、花壇や寄せ植えなどに利用されます。ハハコグサは園芸に利用されることはないですが、ザッソウの中のシルバーリーフといえるかもしれません。
七草粥に入れるくらいですから、当然食べられます。今は草餅といえばヨモギを混ぜてついたものが大半ですが、昔はハハコグサが使われており『母子餅』と呼ばれていました。また、若葉は天ぷらで食べることもできるそうです。
漢字を当てると「母子草」ですが、意味はよくわかりません。一説にはホオコグサと呼んでいたのが転じて、ハハコグサになったと言われています。ホオコグサは茎葉の毛やタネの綿毛が「ほうけだつ※2」ことが由来とされてます。
※1「ゴギョウ」ともいいますが、この呼び方は間違いとされます。(2008 北隆館 新牧野日本植物圖鑑 など)
※2 ほうけだつ 髪の毛や草などがほつれ乱れて伸びきる(小学館 デジタル大辞泉)
(ヤサシイエンゲイ 小林昭二)
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