今回は、バラ科ウワミズザクラ属の「ウワミズザクラ」を紹介します。
北海道から九州の丘陵帯や山地帯で普通に見られますが、特に日当たりのよい谷間や沢の斜面を好んで生える落葉高木で、高さは15mほどになります。
- 幹の直径は50cmになり、樹皮は暗紫褐色、平滑で光沢があり横に長い皮目が目立ちます。切ると独特の匂いを放ちます。
- 枝は灰白色または紫褐色で、無毛か微毛が密生します。
- 大部分の1年生の側枝のほとんどはその秋に脱落して、次年にその同じ節から側枝が伸びてきます。
- 花期は5月頃で、新しい枝の頂に多数の花を付けた総状花序を出します。
- 花序の柄は長さ約10cmで、花序の長さも8〜10cmになります。
- 花序の太さ、径は約3cmです。花自体の径は約6mmと小さいですが、長さ約3mmの倒卵形(先は円形、基部はくさび形又は円形)の白色の花弁が5枚付いています。
- 雄蕊(おしべ)は30本前後あり、花弁よりも長い約5mmあるのが特徴です。雌蕊(めしべ)も雄蕊と同じ長さがあります。花柄は長さ4~6mmあり無毛です。
- 葉っぱも花と同じ時に開きますが、長さ7〜10mmの柄の先に長さ8〜11cmの長楕円形(先は長い鋭尖形、基部は円形)の葉身となります。縁は細く鋭い鋸歯(きょし)になっているのが写真からも見てとれます。
上の写真のように、果実は卵円形で先は尖っています。長さ6〜7mm、径8mm程度で、6月中旬ころに熟すと赤色から黒紫色に変わります。7月、黒紫色になった果肉は甘いです。サクランボほど美味とは言い難いですが……。
西沢渓谷では、本格的な渓谷添いのロードに入る前の平坦で比較的広い道沿いにこのウワミズザクラが点在しています。花からの淡い香りや、落ちた枝などからも独特の香りを嗅ぐことができるでしょう!
ウワミズザクラは新緑時(同時に花時)の枝葉や花序の揺れ、葉っぱを揺らす風の音、木洩れ日、香りと味覚、そして花序や樹肌の触覚など、この樹だけで五感のすべてを刺激してくれます。森林セラピ-にはとても重要な樹木なのです。
ぜひ一度、視覚に多く頼らずほかの感覚をフルに働かせて森を歩いてみてください。きっと、新しい発見ができますよ!
(山梨市森林セラピー推進協議会 森林セラピスト / 四十物治夫(あいものはるお))
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