前回「デンドロキラム」という、素朴でどちらかというと控えめなランを紹介しました。その流れで、今回も派手さはないけれど美しいラン『セロジネ』を紹介します。
私見ですが、この花をひとことで表すとすれば「清楚」です。さらに山野草のような「野趣」があります。私はセロジネが大好きで、趣味で育てているランの中でも鉢数が2番目に多いのがこの花です(一番多いのはデンドロビウムです)。栽培するうえでも、育てやすくて長くつきあえる種(しゅ)です。
セロジネの特徴
熱帯アジアを中心として、中国、南太平洋の島々まで100種以上の仲間がいます。樹木や岩の上に根を張り付かせて育つ、着生(岩生)種です。株元が球根のようにふくらんでバルブ(偽球茎:ぎきゅうけい)になり、その先端に1~4枚(2枚が多い)の葉をつけます。
開花期はおもに冬から夏、香りのする種が多くみられます。花色は白や緑などで、色彩は全体的におとなしく(※1)、花芽はバルブのつけ根、もしくは頂点から出てきます(※2)。
※1 赤オレンジ色の花を咲かせる種もあります。
※2 花芽の位置は種により異なります。
セロジネの生育サイクル
今回は「セロジネ・インターメディア」をとりあげます。
春になると前年にできたバルブのつけ根から新芽を出し、葉を広げて生長します。
秋に生長が止まって株元がふくらみ、バルブになります。
冬前にバルブのつけ根から花芽をだして、冬から春に開花します。
花数は生長したバルブの大きさなどに影響しますが、1つの花芽から多くて10輪ほど咲きます。これを毎年繰り返して株が大きくなるのです。
セロジネの育て方
【冬の管理】
寒さに弱いので室内に置きます。日当たりの良い場所が適しています。
最低気温は低温性種で5℃、高温性種で15℃が目安です。根や葉の生長は止まっていますが、花芽は動いています。水は用土が乾いたら与え、極端に乾かさないよう気をつけます。
【春の管理】
低温にさらすと新芽のでる時期が遅れるので、充分暖かくなってから(5月中旬以降)外に出します。日当たりと風通しの良い場所が適しています。水は用土の表面が乾いてきたら与えます。
強い直射日光に当てると葉が傷(いた)んで枯れてしまいます。薄日の射す場所に置くか、寒冷紗(かんれいしゃ)で日射しを調節(遮光率は50%)します。風通しの良い場所にぶら下げることができればベストです。
【夏~秋の管理】
この時期の水やりや肥料が開花に大きく影響します。いわば勝負の時期です。
水は用土の表面が乾いてきたらたっぷり与えて、乾かさないようにします。暑さを和らげるため、株全体に水をかけるのも効果的です。春と同じく直射日光は避けます。
【肥料】
春、屋外に移動させてから夏前まで月1回、固形の油かすなどを与えます。同時に新芽が出てから秋の中頃まで、液体肥料を週1回与えます。新芽が出てからは速効性の肥料を途切れずに与えるのがポイントです。
いかがだったでしょう。一般の園芸店ではあまり見かけるランではありませんが、ラン展の即売では扱っていることが多いです。興味のある方はぜひ一度育ててみてください。
(ヤサシイエンゲイ 小林昭二)
- 前の記事を読む(ミツバツツジと名がつくのは20種を超えます)
- 次の記事を読む(徳川家の紋所〜フタバアオイ)