今回は、カエデの仲間で日本固有の品種「ホソエカエデ」を紹介します。おもに本州中部に自生します。
- 低い山の林内に生える高さ10〜15mの落葉小高木ないし高木で、雌雄異株(しゆういしゅ)です。
- ムクロジ科カエデ属で樹皮は緑色で黒斑があり、ウリハダカエデに似ています。
- 花は5月に咲きますが、写真のように茎の頂きに長さ5〜10cmの花序(かじょ)を付けます。20〜50個の花からなり、最初は直立していますがその後垂れ下がります。
- 花は淡黄色で5枚、花柄の長さは5〜5mmあります。雄花の萼片(がくへん)は楕円形で、長さは約3mmです。へら形の花弁は長さ約3.5mmで、鋸歯(きょし)があります。雄蕊は8本で、花弁とほぼ同じ長さです。
- 雌花の花被片(かひへん)は雄花より小さく、萼片が約2.5mm/、弁が約3mmで、退化した長さ1mm未満の雄蕊が6~8本見られます。
- 果期は7〜9月で、5〜15mmの柄の先に1.3〜1.8mmの実が鈍角に開く形で付きます。カエデの特徴である分果です。
ホソエカエデのもう一つの特徴は、次の写真のカ-ル状の鱗片葉(りんぺんよう)です。
冬芽の鱗片は2対で、それが開いてこの鱗片葉や正規の葉、及び花が出てきます。鱗片葉はへら形で、長さが約2.5cmあります。背面には黄褐色の下向きの軟毛があり、内面は赤褐色の短毛がまばらに生えているので花よりもかなり目立ちます。
葉は花のある枝に1対、花のない枝には1~4対生えます。
葉身は5角形ないし卵状5角形をしており、長さ6〜15cm、幅4.5〜12cmで、3〜5個に浅く裂けます。基部は浅心形から円形で、裂けた葉先は尾状です。
葉柄は2.5〜8cmの長さで、花期は葉ともども赤褐色の縮毛を付けていますが、葉が生長しきった時にはほとんどなくなります。葉の裏面の脈腋に小さな膜があるのがホソエカエデの特徴です。ウリハダカエデにはありません。
カエデ(モミジ)は北海道から九州、沖縄まで国内で約30種類あるといわれていますが、西沢渓谷添いにはそのうちの約6割が自生しています。紅葉のメッカたる所以(ゆえん)です。
もちろん、紅葉時期は赤や黄色に染まって見事ですが、このホソエカエデは花や新緑時に一際目立つカ-ル状の鱗片葉も楽しめます。ほかにもよく知られている「イロハモミジ」「ハウチワカエデ」「ヤマモミジ」など、このコ-スだけでも数多くのカエデが確認できます。
ここ西沢渓谷添いのカエデの花期は5〜6月に集中しています。
ムクロジ科カエデ属は香り成分のフィトンチッドの量は少ないですが、花の時期には淡い香りを確認することができます。癒し効果としてのおすすめは、新緑時や紅葉時の木洩日体験でしょう!
花の時期に花や鱗片葉をじっくり観察したり、木洩日を浴びたりしていると、知らず知らずのうちにカエデの香りを吸い込むので、更に癒し効果が得られると確信しています。
ぜひ試してみてください。
(山梨市森林セラピー推進協議会 森林セラピスト / 四十物治夫(あいものはるお))
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