花屋で売られているたくさんの花の中で、暑い夏でも寒い冬でも、おそらく長もちで安心して飾っていただけるのがユリだと思います。私の店で一番売れるのもユリです。ですからユリについてもっとたくさん知って「ユリのことなら任せて!」と言えるよう勉強すべく心掛けています。
ユリの産地見学
私の住む印旛地区はユリの産地でもあり、私の店では生産者さんに直接ユリを仕入れに行かせていただいています。そういった経緯で、「ユリ研究会いんば(略称:ユリ研いんば)」の方から3年前に「一緒にユリについて勉強しましょう。ハウスで育つユリをじっくり見てみませんか」と声をかけていただき、産地見学に参加しています。今年も先日、産地見学に行ってきました。
印旛地区は周年(1年を通じて)栽培をしており、秋から春にかけてをメインにユリを生産する暖地と呼ばれる産地です。年末と春先、初夏に出荷ピークを迎えるように生産しています。
今回集まったのはユリ生産者、球根輸入会社、市場、仲卸、改良普及員、JA(農業協同組合)職員、そしてクリザールという鮮度保持剤の会社の研究員です。なぜこの人たちが集まるのでしょうか。それはあなたのもとへとユリが届くまでにユリに関わる人たちだからなのですよ。
ユリの生産
日本のユリ生産は今やほとんどをオランダとニュージーランド、チリから輸入した球根で行われています。ですから輸入会社がなければ、日本でユリを見ることができない、といっても過言ではないくらい、球根輸入会社は重要な役割を果たしているのです。(ごくわずかですが日本でもユリの球根生産が行われています。)
そしてその輸入会社から球根を購入し、育てるのがユリ生産者です。球根会社からユリの球根は冷凍された状態で届きます。そしてそれを植え付ける時期にあわせて生産者が徐々に環境を整えてハウスに植え付けます。生産者は栽培する上で、水を与える量を調整したり、肥料や農薬、また、冬に咲かせるためには暖房などを駆使して消費者が一番必要な時期に合わせて出荷できるように育てているのです。近年の天候不順の連続で、ユリ生産は以前とは比較にならないくらい難しくなっているようです。それでも苦労を重ねて、例えばお正月に合わせてちょうどよく咲くよう、栽培しています。
花や野菜を作るうえで技術面のアドバイスや植物の病気や害虫など、土壌成分などに関する問題解決の助け、また経営相談に応じるなどするのが県の農業事務所の改良普及員です。今回の産地見学会も農業事務所が主催です。印旛のユリを生産するに当たって、改良普及員の存在が大きな助けになっているようです。
また、JAも出荷、販売に大きな関りを持ちます。個人で営農している場合はその限りではありませんが……。
ユリの仕入れ
そしてユリがうまく育って出荷時期を迎えたら、市場へと送られます。この時に関わってくるのがJA(農協)です。ほとんどの花は運送会社の人たちにより、トラックや空輸で市場へ届きます。市場では全国各地から育てられた花を集めて、取引が行われます。花屋やホームセンターなど、それぞれの市場と取引をする権利を認められ、買参番号を与えられた買参人が注文や予約相対(セリを行う前に、市場と買参人との間で交渉して買うこと。たいていは市場から価格が表示される)、競りで花を仕入れるのです。
また、買出人といって、買参人ではないが市場で仕入れをすることを認められた花屋やフラワーデザイナーなどは仲卸から花を仕入れます。オリエンタルユリですと、市場を通して仕入れる場合、少ないもので10本、多くは20本をひと箱として出荷されてきますが仲卸からは少しの数(5本から買えることが多い)で仕入れることができるのでありがたいです。
花屋などであなたが購入する、プレゼントで花をいただく、こうしてあなたのもとへとユリが届きます。1本のユリですが、たくさんの人びとが関わっているのです。どうか一日でも長く飾っていただきたいな、とユリ好き花屋の私は思っています。
そこで、ユリを長く楽しむためにぜひ使っていただきたいのが鮮度保持剤です。クリザールのユリの鮮度保持剤には花が咲くために必要な糖分と植物ホルモンが入っているのだそうです。これを使うことで美しく花が咲き、葉が青々としていられるのだそうなのでぜひ使ってみてくださいね。
(高橋植物園 高橋さやか)
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