「日陰では植物が育ちにくい。でも何か植えたい」と思う方もたくさんおられるでしょう。今回は、庭の日陰で育ちながらも丈夫で、かわいらしい花を咲かせるベゴニアの仲間(以下、ベゴニア類)、シュウカイドウを紹介します。
こんな植物です
シュウカイドウは、春になると地中の塊茎(球根の一種)から芽を出して、茎葉を広げます。葉っぱは左右非対称で、心臓のような形がユニーク。ベゴニア類でよく見られる葉形で、個人的に好きなかたちでもあります。葉色はやや明るめの緑色。縁は浅くギザギザになり、しっかりした厚みがあります。草丈は50cmくらいに生長します。
8月も終わりに近づくと、シュウカイドウは茎の先端あたりから花茎(花柄)を伸ばします。淡いピンクの花を咲かせながら、花茎は二又に分かれて伸びていきます。最初は雄花が咲きます。咲き進んでいくと、さいごに雌花を咲かせます。雌花は花の後ろにひらひらした三角錐の子房が付いているので、雄花との区別は簡単です。
細かく分枝した花茎は細工物のようで、花と相まって美しさを増します。花房の垂れ下がった姿はシャンデリアのようだと思うのですが、褒めすぎでしょうか?
花が咲き終わり秋も深まる頃になると、葉の付け根に豆粒大のムカゴが1個~数個付きます。ムカゴは地上にできる球根のようなもの。地面に散って、翌春になると芽を出して生長します。また、地植えにしていると、親株の周りに落ちたムカゴが芽生え、年々増えていきます。
原産地や名前の由来
ベゴニア類は、熱帯、亜熱帯の高地に自生し、寒さに弱い種類が多いです。そんななか、シュウカイドウは日本の屋外でも冬を越せる、耐寒性に優れたベゴニア類のひとつです。
※冬は茎葉が枯れて球根(塊茎)の状態で越します。
さて、シュウカイドウは、「秋海棠」と字を当てます。秋に海棠(カイドウ)(※)に似た色の花が咲くから、この名前があるとされるのですね。
※カイドウはバラ科の落葉樹で春に淡いピンクの花が咲きます。
身近な場所ではお寺や神社、日本風の庭園などに植栽されていることが多いのですが、シュウカイドウは、しっとりとした和の雰囲気によく合います。そのようなところから、日本原産の植物だと思われがちですが、実際は中国からマレー原産で、日本には江戸時代前期、寛永年間(1640年頃)に中国から入ってきたとされます。
育て方
湿り気のある日陰でよく育ちます。土壌が乾くようなら、こまめに水を与えるとよいでしょう。肥料は春に芽が出た頃、ゆっくりと効く固形の肥料を少量株元にばらまいておけば安心です。環境の合った場所なら、特に何もしなくても毎年育ってくれるでしょう。。
鉢植えで育てることもできますが、その際は、用土の乾きすぎに注意してこまめな水やりを心がけましょう。
株分けや挿し木で増やすことができますが、秋に熟したムカゴを採って植えるのが一番手軽です。
日陰で楽しむシュウカイドウ、機会があれば是非。
(ヤサシイエンゲイ 小林昭二)
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