さらさらと風に揺れる様が素敵なフウチソウ。
漢字を当てると『風知草』です。
まさしくその名前がぴったりで、草姿や名前に雅味を感じます。主張するけど主張せず、派手ではないけど地味でもない。気づいたらそばにそっといる、そんな雰囲気の植物です。
葉裏が表向き?
植物として正式な和名はウラハグサですが、園芸ではフウチソウで通っています。ウラハグサは、茎が枝垂れて、葉の裏側が上を向くのでこの名前があります。園芸で栽培される斑入り種をフウチソウ、緑葉をもつ本来の種をウラハグサと区別することもあります。
茎から葉のつながり方をたどっていくと、本当に葉の裏が表を向いていることがわかります。機会があればぜひ観察してみてください。ウラハグサの由来が理解できると思います。
美しい葉と控えめな花
学名はハコネクロア・マクラ(Hakonechloa macra)で、箱根で多く見られることからこの名前があります。半日陰でやや湿り気のある斜面に群生します。イネ科の多年草で、冬に茎葉は枯れて休眠し、春になると芽を出して生長します。
細長いササのような形の葉は、控えめな光沢を持ちます。葉に黄緑色や黄白色の筋が入る、斑入り種、全体が美しい黄色になる、’オールゴールド’などの品種があります。
夏~秋に花を咲かせます。花自体は目立ちませんが、花穂を出した株姿は、フウチソウの雰囲気をさらに繊細なものにします。
育て方
地植え、鉢植えいずれでも育てられます。日当たり~明るい日陰でよく育ちます。春~秋の茎葉が元気に茂る時期は、乾燥に気をつけます。鉢植えは水はけのよい土を使い、乾いてきたらたっぷりと水を与えるのがコツです。浅めの鉢に植えるとバランスが良く、見栄えがします。
庭植えの場合、樹木の株元に植えると、良く映えます(このような用途を「根締め」と言います)。
一度は見て、育てていただきたい、フウチソウのお話でした。
(ヤサシイエンゲイ 小林昭二)
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