今の季節、山中や山麓の湿気の多い箇所に自生する「ツリフネソウ」や「キツリフネ」。どちらも、ツリフネソウ科ツリフネソウ属の1年草です。私が森林セラピ-ガイドをしている西沢渓谷のロード沿いにも、この「ツリフネソウ」や「キツリフネ」が待ち受けています。
山麓の水辺に生える「ツリフネソウ」。8月から10月上旬頃までが花の時期です。紅紫色と目立つため、比較的容易に見付けることができます。
茎の高さは、50~80cm程度、葉腋から斜め上に花序が伸びて7~8個の花が付きます。その正面幅は25~27mm前後、側面の長さは35~40mm程度となります。また、長さ4mmほどの雄蕊(おしべ)を5個持っているのが特徴です。葉は互生し、葉身は菱状楕円形で長さ6~14cm、幅4~7cmほど。先はとがり基部は楔(くさび)形、縁に鋸歯があります。葉柄は長さ10~45mm、上側は赤味を帯びています。
「キツリフネ」は、山中の湿地に多く自生する比較的柔らかな草。花の時期は若干短く、西沢渓谷では7月中旬から9月上旬が見頃となります。花の色が黄色で目立ちづらいので、見落としがちです。
全茎の高さは40~80cmで、花序は葉腋から下垂し、3~5個の花が付きます。正面幅は25mm前後、側面の長は30~40mmです。葉は互生し、葉身は卵形(長楕円形)で、長さは4~8cm、幅2~5cm。先は鈍く基部は鋭形で縁に粗い鋸歯があり、長さ2~5cmの細い柄を付けます。体に毛が無く、やや白味を帯びた感じがします。
「キツリフネ」も「ツリフネソウ」も、正面幅は25mm前後ですから、花の大きさは大差ありません。また、花弁は3個、上方の1片は小型の卵状方形、側方の2片は歪んだ倒卵形で長さ約20mm、幅約15mm、基部はくびれ、内面に斑点がある点も共通です。
萼片は3個、上部の2片は卵形、下部の1片は太い筒状で径は約10mmと共通点も多いですが、「ツリフネソウ」の方がやや大き目でしょうか。雄蕊(おしべ)の数と長さは同じですが、「ツリフネソウ」の花糸が淡白色に対し「キツリフネ」それは淡緑色です。
花柄は、「ツリフネソウ」は紅紫色で長さ10~15mmのしっかりした柄に対して、「キツリフネ」は細く弱々しい柄です。
さて、この写真で、花や葉っぱに小っちゃな水滴が付いているのに気が付かれましたか?
西沢渓谷ロードの特徴の一つに、豊富な“マイナスイオン”があります。どの場所でも数千個/cm3を超えており、滝の傍などの多い所では約20,000個/cm3(年平均)に達します。
マイナスイオンが直にストレスホルモンを下げる効果があるという医学的証明は未だ報告されてはいませんが、‘海辺や川縁/噴水に近くに居ると何となく気持ちが良い’等の経験をされたことはあるのではないでしょうか? 理屈抜きに、西沢渓谷を歩いて‘気持ち良っかった’と感じていただきたいと思います。少なくとも、身体の中の活性酸素を減少させる効果はありそうです。
そう考えると、「ツリフネソウ」や「キツリフネ」もマイナスイオンを好んで捕まえているのかもしれません。
(山梨市森林セラピー推進協議会 森林セラピスト / 四十物治夫(あいものはるお))
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