はじめまして。「つくば牡丹園」の関浩一です。
「つくば牡丹園」は、茨城県つくば市にある敷地面積は約20,000坪の民間の植物園。毎年4月末から5月末頃までは、550種類の牡丹や250種類の芍薬をはじめとした花々が咲き誇ります。私は花職人として、美しく大きな牡丹や芍薬を咲かせるために、「つくば牡丹園独自」の無農薬栄養周期自然循環型農法を確立すべく、現在大学院に通いながら、研究を重ねています。
さて、
「今年、きれいな花(牡丹や芍薬)が咲いてくれました。来年も同じように咲かせるにはどうすればいいですか?」。
お客様からこんな質問をいただきました。
今、花柄はどうなっているでしょうか。
もしそのままにしているなら、すぐに摘み取ってください。なぜなら、そのままだと種子を育てようとして、翌年用のエネルギーを大きく消費してしまい、大きな花を咲かすには力不足となってしまうからです。大きな花の場合は特に翌年に花が咲かないような状況も考えられます。
「つくば牡丹園」では、来年も皆様にきれいな大輪の花をお見せするために、花数にして約20万輪、そのほとんどを摘み取っているんですよ。
さて、摘み取った花柄ですが、通常であれば廃棄してしまうのでしょうが、「つくば牡丹園」では、それを肥料として株間に置き、合わせて当園が独自の技術で開発した肥料である『土壌革命』を花柄の上に乗せ、早めに発酵させ、土に還すようにしています。そうすることで、ポリフェノールを多く含んでいる花柄が発酵して腐植に変化し、良い土壌になっていくのです。
病気の原因になってしまうため、生の花柄は土の中に入れないように気を付けましょう。生の花柄を土中に入れたとき、酸素がないと腐敗してしまい、悪玉微生物が繁殖して、根を枯らしてしまいます。特に、土中に入れた花柄がポリフェノール(タンニン)を含んでいる場合は、モンパ病が発現し、最悪の状態になりかねません。
さて、きれいで大きな花を咲かせるには、これ以外にも2つ、やらなくてはならないことがあります。
1つ目は、施肥です。
花を咲かせるために体力をたくさん使った牡丹や芍薬に、肥料を与えます。我々人間だって、精いっぱい働いたらおなかが空きますね。植物たちだって同じです。代表的な肥料は以下のとおりですので、参考にしてください。
- 窒素:リン酸:カリウムの比率が1:2:1のバランスの有機質肥料
- 五大要素
窒素(魚かす、油粕)
リン酸(米ぬか、骨粉)
カリウム(草木灰)
カルシウム(消石灰、卵カル、牡蠣殻石灰)
マグネシウム(苦土石灰、にがり、牡蠣殻石灰)
- 微量要素(ミネラルで有機をとる場合は海藻、牡蠣殻石灰)
2つ目は草の管理です。
草は花にとっての競争相手でもありますし、また、そのままにしておくと、景観を損なうこともありますから、根から抜き取ってください。「つくば牡丹園」では、抜き取ったまたは刈り取った草をその場において、『土壌革命』と米ぬかをその上からかけておきます。
草は多くの栄養を含む、自然に還るマルチ(土の表面を覆う)素材です。マルチで覆うことにより、土は乾燥せず、微生物が住むのに良い環境を作るのです。微生物は草を餌にしてより多くの微生物を繁殖させます。そしてその微生物の死骸を栄養にして、牡丹・芍薬は、きれいで大きな花を咲かせるという循環です。
草を土の上で発酵させ良い肥料にするのか、土中で腐敗させてしまうのか、そのバランスを見極めながら、皆様にきれいな花を見ていただくことが、花職人である私の腕の見せどころでもあるのですがね。
(つくば牡丹園・花職人/関浩一)
- 前の記事を読む(緑のカーテンには摘芯が重要)
- 次の記事を読む(お庭レシピ 第2回 『ミント』(パート1))