「草木花 × 自治体」〜葛飾区 かつしか花いっぱいのまちづくり

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癒す、繋ぐ、育む……。花はいろいろな力を持っています。 その力を利用して、人と人を紡ぐ活動に力を入れている東京都葛飾区。平成26年9月には、「かつしか花いっぱいのまちづくり推進協議会」を発足、花を中心に区民や団体、事業者が協働する仕組みを作りました。

 

講座で学んだ知識を地域で広める

見学させていただいたのは、葛飾区で花づくり活動をしている団体向けに行われている「花壇管理step up 講座」。この講座で学んだ花壇管理に関する知識や技術を自分の所属する団体で生かすことを目的とし、花壇の設計から土作り、ふだんの手入れなどを、座学と実習で学ぶというもの。合わせて、専門家のティーチングスキルも身に付け、自分の所属する団体のメンバーに学んだ内容を共有するそうです。ということで、一定以上の花壇作りの経験、そしてモチベーションの高い皆さんが集まりました。

第3回目にあたるこの日は、夏花壇の片付けと秋冬花壇の設計と施工、管理方法を学びます。まず座学では、植物の耐寒性、冬の花壇を彩る植物、そして植栽間隔、高さ、配色やデザインなど、冬花壇をつくるにあたっての基本となる知識を学びます。とはいえ、かなり難易度の高い内容です。

 

それを基に、区役所中庭の屋上緑化見本園に移動。夏花壇の片付け後、設計図を基に、花の苗を置いていきます。設計図を見て指示を出す人、上から、横からそれを眺める人、全員のOKが出た後は、植え付けです。皆さん、真剣そのもの。時折、指導の千葉大学環境健康フィールド科学センターの渡辺均先生から、「高さが揃っていませんよー」「いろいろな角度から確認してくださいね」などのアドバイスが飛んで来ます。どの方もわからないことがあると、「先生、ここはどうしたらいいですか?」と積極的に質問されていました。

 

花壇ができるまで

 

まずは夏花壇の片付けです

まずは夏花壇の片付けです

シンボルツリーの周りがきれいになりました

シンボルツリーの周りがきれいになりました

設計図通りにポットを並べます

設計図通りにポットを並べます

配色や高さも花壇には大切な要素です

配色や高さも花壇には大切な要素です

ポットを置いて配置を確認したら植え付けです

ポットを置いて配置を確認したら植え付けです

ガーデンシクラメン、キンギョソウ、ストックなど、色とりどりの花が並びました。

ガーデンシクラメン、キンギョソウ、ストックなど、色とりどりの花が並びました。

平面だった設計図は、参加者の皆さんの手により、だんだん花壇として形作られてきます。「難しかったですけれど、とても勉強になりました」という前向きな声も聞こえて来ます。ここで学んだ知識や技術は、参加者の皆さんによって、地域の仲間に伝えられ、そこでまた花づくり活動に活かされるというわけですね。

 

花のもつ力を活かしたさまざまな地域活動

そもそもこの活動は「花をキーにしたまちづくりをする」ということから始まったものだと、葛飾区環境部環境課緑化推進係長の早坂幸一郎さんが教えてくれました。

早坂さんは言います。「例えば、地域と学校のかけはしとなる『学校地域応援団』のひとつのグループは、学区域で最も犯罪件数の多かった公園に花壇を作ったそうです。花壇を作れば、植え替えたり、水をやったりして維持をしなければなりません。そのためには、大人たちがその場所に足を運ぶようになるだろう。また、花を植えて環境が美化されれば、小さな子どもを連れた人たちも訪れやすくなるだろう。そうすることで犯罪も抑止されるのではないかと考えたそうです。また、教育面から考えても、学校の外に生徒たちと花壇を作ることで地域との関わりが深まり、地域のコミュニティを活性化します。花壇の世話をしていると、『きれいですね』など会話が活発になって、人と人との関わりが深くなってくるということです。きっかけの犯罪抑止という面でも、明らかに犯罪件数が減っていると伺っています」

金町公園

金町公園

早坂さんは続けます。「高齢者の社会参加という点では、今までは何らかの講座を受けても身に付けたスキルを発揮する場を見つけるのは困難でした。それならばと、公共用地の一角に花壇を用意して、種から発芽させる手法や土作りなど花づくりに必要なスキルをそこで開催する講座で学んでいただき、実際に世話をしていただく場を提供するスタイルが3年前から始まりました。何もなかった場所に花壇ができるし、それを担う人材も発掘できるし、一挙両得です。認知症の予防や家にこもりがちな人が外に出るなど、高齢者の社会参加にも一役買っています」

区役所前の花壇

区役所前の花壇

葛飾区でも、花の苗や種、土作りに必要な肥料や腐葉土を提供したり、用具を貸し出したり、また、ホームページを充実させたり、花壇コンクールを実施したり、指導者を養成したり、さまざまな角度から区民の花壇作り活動のサポートに力を入れています。今回見学させていただいた講座もその一環です。

講座で学んだ知識や技術は参加者を通して地域の人たちに伝えられます

講座で学んだ知識や技術は参加者を通して地域の人たちに伝えられます

コミュニティができたり、犯罪を抑止したり、高齢者の社会参加を促進したり、「花」の力は無限大、活動をする皆さんの表情や早坂さんのお話から、改めて実感することができた貴重な時間でした。 エバーグリーンのユーザーの皆さんがお住まいの地域で、おもしろい活動がありましたらぜひお知らせくださいね。

(エバーグリーン編集部)


ガーデンシクラメン、キンギョソウ、ストックなど、色とりどりの花が並びました。