オオバコは当たり前に身近にあるザッソウです。生育環境は芝生や草地の中、道路のすき間など場所を選びません。人や車の通る場所に沿って生えていることが多いのは、地面に落ちたタネが靴底やタイヤにくっついて散布されるからです(タネは水に濡れると表面がゼリー状の粘液で覆われ、ほかの物にくっつきやすくなります)。
タネだけではなく自身もまた、路傍で踏みつけられることが多いオオバコですが、踏まれても枯れることなく青々と生長しています。なぜ踏まれても大丈夫なのか? 観察したうえで気づいたことがあるので、それをお話しします。
オオバコは地面に張り付くように生え、中心部分から葉っぱが放射状に広がります。茎は極端に短いうえ、ほぼ地面に埋まっていますので折れることはありません。茎の先にある生長点(葉や茎を生み出す大切な箇所)も地際にあります。踏みつけられても葉っぱがぺしゃりと圧されるだけで、茎や生長点が大きく傷むことはありません。
もう1点は葉が丈夫でちぎれにくいことです。葉っぱには縦方向に数本、弾力がありしなやかな筋が入っています。特に葉の軸部分にしっかりと筋が入っており、この部分をちぎると筋だけちぎれずに残ります。
茎や生長点が地面に保護されており、葉がちぎれにくいのが踏みつけに耐えられるポイントだと思います。
茎が立ち上がらなければ日光が当たらず、ほかの植物との競争に負けてしまうのでは? という疑問が残りますが、オオバコが元気に育っている場所には、なぜか背の高い植物は生えていません。ほかの植物は踏みつけに耐えられないか、踏み固められた地面では根が充分張れず生育できないのかもしれません。
地面に張り付くような株の姿ですが、花茎は上に伸びます。花粉が風によって運ばれる風媒花なので、より高い位置で咲いた方が風も受けやすいし花粉も遠くまで飛んでくれるのでしょう。虫に受粉を手伝ってもらう虫媒花と違って花びらや蜜で花の存在をアピールする必要がないので、つくりは非常にシンプルです。花の咲き方は2段階に分かれており、雌しべが出てきて受粉したあと雄しべが出てきます。花茎も葉っぱと同じく踏みつけに強く、しなやかで折れにくい特長があります。
キレイな花を咲かせるわけでもないので注目されることはありませんが、じっくり観察すると、とても理にかなった生き方をしているオオバコ。みなさんも見かけたら、ちょっと目に留めてあげてください。
(ヤサシイエンゲイ 小林昭二)