[シラタマノキ、アカモノ]春夏に白や赤で山を彩る低木たち|ツツジ科シラタマノキ属|エバーグリーン

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高さ約20cm、ツツジ科シラタマノキ属の小さくて可憐な木を二つ紹介します。

一つ目は「シラタマノキ」です。別名を“シロモノ”といい、本州(中部以北)~北海道の亜高山帯~高山帯の林縁や道沿いなどの日当たりのよい乾いた岩地・礫地などに生えます。

 

シラタマノキの花期は6〜7月とされていますが、白山や槍ヶ岳などの高山では8月下旬まで見られます。茎の上部の葉腋や枝の先から2〜6cmの花序を出して、2〜6個の下向きの壺形の花をつけます。大きさは実の約60%ですのであまり目立たず、ついつい見逃してしまいます。9月に入ると、2~3枚目の写真のように径が約1mmの白く丸い実になります。

シラタマノキの最大の特徴は、香りです。茎・葉・花など全体がサリチル酸メチルに似た独特の香りを持っていますが、特にこの白い実は強い香り含んでいます。同行した知人は、『サロンパスの臭いで疲れやコリが吹っ飛んだよう!』と驚いていました。

また、常緑葉の感触が新鮮に感じます。葉は長さ1.5〜2.5cm、幅0.8〜2cmと小さくて先は円形です。革質で縁は鈍い鋸歯(きょし)があり、裏面は白みを帯びます(耐寒性を有しています)。山歩きでシラタマノキに出合ったら、ぜひともこの木の香りをお楽しみください。なんとなく疲れが軽減できた、と感じられればラッキーです。

熟した実(9月下旬)

熟した実(9月下旬)

熟した実(9月下旬)

 

二つ目はイワハゼ、標準和名はアカモノといい、日本の固有種です。北海道~本州・四国の深山などの日当たりのよい乾いた所に生えます。私は日本海側の多雪地域の山々で数多く見かけたと記憶しています。

アカモノ(6月中旬)

アカモノ(6月中旬)

 

葉は常緑で長さ1〜3cm、幅1〜2cmの卵形をしており、同じく革質です。縁は細い鋸歯(きょし)があって、先は尖っています。花の時期は、5〜6月です。上部の葉腋から1個、長さ2〜4cmの花柄を付けて下向きにつきます。写真のように花冠は釣鐘形です。白色で赤みを帯びており、長さは約7mmです。小さく5つに裂けた縁が軽くカールしているのが特徴です。

花が終わった果期には、赤い萼(がく)が成長して液果実を包み込んで赤い偽果を形成します。東北地方ではこの偽果をアカモモと呼ぶことがあり、なまって「アカモノ」になったといわれています。この液果は甘くて美味しいです。アカモノも茎や葉などの手触りが楽しめます。

 

この、一見野草と見まちがえそうな紅白の名の付いたツツジ科の常緑低木二つを確認・見比べてみてください。ただし、同じ場所で二つ同時に出合うことはないと思いますが。香りのシロモノと味覚のアカモノ、みなさんはどちらがお好みでしょうか?

 

山梨市森林セラピー推進協議会 森林セラピスト / 四十物治夫(あいものはるお))


 

熟した実(9月下旬)