今回は、高山帯または北地の草原に生える「クロユリ」を紹介します。ユリ科バイモ属の多年草で、本州中部以北から北海道に分布します。本州の高山のものをミヤマクロユリ、北海道に生えるものをエゾクロユリと区分することもあります。
茎の高さは10〜50cmで、3〜5枚の葉が数段つきます。葉の長さは3〜10cmの披針形または長楕円披針形をしています。花の時期は6〜8月です。茎の頂部に1~数個、斜め下向きに付きます。花被片は暗紫褐色または黒紫色で網目模様がついていて、長さ25〜30mmの長楕円形です。
山歩きを始めるかなり前に北海道のサロベツ原野の一画でクロユリに出合いましたが、その当時はまったく興味がなく写真にも収めていません。白山で出合ったときは何故か新鮮に感じ、ほかの山でもクロユリを探し求めるようになりました。
北アルプスの山々や中央アルプスなどでも出合っています。4枚目の写真は群生するクロユリです。花の色に華やかさはありませんが、これだけ多いと圧巻ですね! 白山に行く機会があれば探してみてください。
ユリ科ですがユリ属ではありません。従って、いわゆるユリとは香りが異なります。私自身は嫌いではない(どうしても嗅ぎたいほどでもない)ですが、クロユリの香りは嫌いな方も多いようです。受粉を助けるのが蝶や蜂ではなく蠅(ハエ)なので、先入観も入っているのではないかと思います。機会があれば香りを試してみてはいかがでしょう?
(山梨市森林セラピー推進協議会 森林セラピスト / 四十物治夫(あいものはるお))