思いのほか早く過ぎ去りそうな秋に未練しかありません。待ってくれないか。まだ冬を迎える覚悟ができていないんだ。いや、むしろ一年中秋でも良いから居てくれよ。寒いのはイヤなんです。暑いのもキラいだけど寒いのもキラいです。待って、待ってってば! 秋! 行かないで!!!!
そんなとき、コウテイダリア(コダチダリア)を目にするとちょっとホッとします。強引な展開だなと思われるのは分かっています。私も強引だなと思いますが、コウテイダリアにはその強引さがあるのです。
ダリアはメキシコが原産地の非耐寒性の球根植物で夏の花のイメージがありますが、今回紹介するコウテイダリアは高地に生息し、夏ではなく秋、しかも霜が降りる頃に開花する種類です。コウテイとは学名のDahlia imperialisを訳した呼び名で漢字で書くと「皇帝」。草丈8~10mにも達する堂々たる草姿を表して名付けられました。標準和名はコダチダリア。木立と書き、四角形の膨れた節のある茎が木化して大きく生長するからです。
中空の幹なので脆く折れやすいため、夏の台風到来には毎回大変気を揉まされるのですが、たとえ折れたとしても、あっという間に次の芽を出し秋になっても凄まじいスピードで伸びていく姿には、去り行く夏を振り返らない強引さのような生への執念すら感じさせられます。
皇帝ダリアは東京都内であれば屋外でも冬越ししますが、寒さが厳しい地域では節で切り取り、新聞紙で包んで凍らないように風通しの良い暗い場所で保管しておけば、翌春に植え付けられます。短く切り戻して、根元に敷き藁を敷いて冬越しさせるのもよいでしょう。
毎年大きく生長し過ぎるとせっかく咲いても見えないじゃないかと思うのですが、正直言うと花はそんなに見ごたえがある訳ではないから…、いいのです。一重で薄ピンク色の掌大の花が下向きに咲きます。ヒマワリのような巨大な花がボーンと咲くわけではないので期待はしないでください。
しかし、どこまで大きくなるんだろう? 1階を越え2階も越えるか? と観察するおもしろさや、寒さが増してきて景色も寂しくなる頃に大きい図体に似合わぬ楚々とした花が咲くのが皇帝ダリアの栽培の楽しみです。大きくできる場所をお持ちの方は挑戦してみてください。