キツネノマゴはキツネノマゴ科の一年草で、夏から秋に野原や道端などで見かけるザッソウです。適度な日差しと湿り気のある場所が好きなようで、筆者の住んでいる周りでは、林縁に群生することが多いです。日本では主に本州、四国、九州に分布します。
漢字を当てると「狐の孫」となります。名前の由来は、花がママコナという植物に似ていて、毛深く小型な草姿をキツネに見立てた「キツネノママコ」が転じて「キツネノマゴ」になった、花穂の形がキツネのしっぽみたいだから、など諸説ありますが、はっきりしません。
ユニークな名前以外あまり特徴がありません。名前だけ知っている人に実物を見てもらうと、がっかりされそうです。なんというか身近で見られる割に気づきにくく存在感の薄い、よくいえば素朴な植物です(花が咲いているときは、多少目に付きます)。気づいていないだけで、みなさんの近くにも居るのでは。
花は非常に小さいですが色合いや模様が可愛らしく、キツネノマゴの数少ない魅力といってもよいでしょう。幅5mm程度、色は紫に近いピンク色、上下に開いた唇形で、正面から見ると口を開けて舌を出しているようにも見えます。
下側の花びらのつけ根には色が白く抜けたように模様が入ります。著者はその模様を見たとき、ドバイの人工島パーム・ジュメイラ(の真ん中の部分)みたいな形だなと思いました。……ん? 気になった方は検索してみてください。
似た植物に同じキツネノマゴ科のハグロソウがあります。キツネノマゴは上側の花びらが丸くふくらんで袋状になりますが、ハグロソウは同じ部分が平べったく反り返るので、区別はつきやすいです。
キツネノマゴ科、馴染みのない方も多いのではないでしょうか? 園芸で親しまれているものにアカンサスやアフェランドラやコエビソウ、フィットニアなどがあります。個人的には「熱帯植物的なものが多い」「植物園の温室でよく見かける」というイメージがあります(かなり偏っています)。
ほかにもキツネと名の付く植物がたくさんあります。それはまたの機会に。
(ヤサシイエンゲイ 小林昭二)