「ハナイカリ」はリンドウ科ハナイカリ属の1年草または越年草で、北海道~本州・四国に分布し、山地の日当たりのよい場所に生えます。漢字では「花碇」。距(きょ)のある花冠が船の碇に似ているからです。イカリの名がついていますが、以前紹介したメギ科のイカリソウと分類は異なります。
記録や記憶をたどると、「ハナイカリ」に出あったのは約15年前の櫛形山(南アルプス連峰の北東:甲府盆地側)でした。(筆者が)森林セラピーに関わるようになり、周りをゆったり観察する習慣がついたので目に留まったのだと思います。
それまでも八ヶ岳連峰や、少し足を伸ばして関西の山々にも登っていましたがハナイカリのことは知りませんでした。もしや気付かなかったのだけなのでは……? 山頂を目指すだけの登山では、とても2枚目のようなまだ黄色みが少ないハナイカリには気付かなかったと思います。近年は、ハナイカリに出あえる楽しみが増しました。
日本国内のハナイカリ属は、このハナイカリ1種だけといわれています。花は微かによい香りがします。比較的細く長い花柄の先に花(花冠長さ1cm弱)がつきますので少しの風でもゆらゆらと揺れます。草全体、特に茎と花はスベスベした感触が印象的でしたね。花期は8月中旬~9月中旬ですが、この花に出あうと“夏が終るのだなあ”といつも感じています。
みなさんもぜひ、山でハナイカリを見つけてみてください! 休憩を兼ねて、じっくり観察されることをおススメします。そのとき、どんな印象を持たれるのか確かめてみてはいかがでしょう?
(山梨市森林セラピー推進協議会 森林セラピスト / 四十物治夫(あいものはるお))