トゲチシャは夏頃に道端や空き地でよく見かけるザッソウですが、以前から違和感をもって横目で見つつ通り過ぎていました。その姿の何がそんなに気になるのか?
観察してみて違和感の正体に気づきました。それは葉っぱの付き方です。トゲチシャの葉っぱは平らな面が横向き、茎に対して縦につきます。しかも最初から縦に付いているのではなく、葉っぱの根元で90度ひねりが加わって縦になるのです。そんなことしなくても、葉っぱの面を素直に上に向けたほうが、太陽に光もたっぷり浴びることができそうですが……。いろいろな意味でひねくれている感じがします。
葉っぱの形は虫に食い荒らされた跡のように不揃いな切れ込みが入り、葉裏の主脈に沿って一列にトゲが並びます。一見痛そうなトゲですが、触ってみるとさほど鋭くはありません。葉っぱに切れ込みの入らない個体はマルバトゲチシャと呼ばれ、区別されています。
草丈は大きなもので2mくらいです。茎の上の方が細かく枝分かれして、淡い黄色の花を咲かせます。花後にタンポポのような綿毛を持ったタネができます。
トゲチシャはヨーロッパ原産ですが、日本でもほぼ全国で見られる帰化植物です。1949年に北海道で確認されたのが最初とされています。
名前はトゲのあるチシャという意味です。「チシャってなに?」と思う方がおられるかもしれません。ざっくりいえばレタスのことです。草姿からは想像できませんが、トゲチシャはレタスと非常に近い植物といわれており、どちらもキク科チシャ属に分類されます(意外かもしれませんがレタスはキク科なのです)。ではどれくらい近いかというと「トゲチシャの栽培品がレタスである※注」という説があるくらいです。実際はそこまで単純ではなく、トゲチシャが元となり、長い年月と複雑な過程を経て現在のレタスになった、ということなのでしょう。道端のザッソウが食卓を彩る野菜につながっているとは、なんとも妙な縁や親しみを感じます。
※注 参考:2008 牧野富太郎 新牧野植物圖鑑 北隆館
(ヤサシイエンゲイ 小林昭二)