今回は草のよう見えますが、実は高山性の匍匐性(ほふくせい:這う)小低木、「チングルマ」を紹介します。
バラ科チングルマ属に分類され、“イワグルマ”とも呼ばれます。植物に詳しい知人によると、幹の太さがマッチ棒くらいになるまで10年はかかるそうで、天眼鏡を用いると年輪も確認できるそうです。採取できないのが残念ですが……。
高山の水湿の多いお花畑に群生し、北海道から本州中部以北の比較的高い山などに分布します。私は、西は白山から北は大雪山に至るさまざまな高山で出あっています。上から3枚の写真は北岳稜線沿いで撮ったものです(2枚は7月下旬〜8月上旬)。
チングルマという名前は、実の形が子どもの遊ぶ風車に似ていることから「稚児車」が由来のようです。
葉は7〜9個の小葉からなる羽状複葉で、小葉は狭卵形をしており先端は尖っています。長さは6〜15mmで、縁は不揃いな切れ込みと鋸歯があって革質で光沢があります。
花茎は高さ10〜20cmで、頂部に直径2〜3cmの白い花を付けます。花期は7〜8月です。花弁は5枚で特別変ったところはありませんが、花が終ると一変します。下の写真は、花柱が3cmほどに伸びて羽毛状になったことがよくわかりますね!
下の写真は初雪の降った大雪山で撮った「チングルマ」の群生ですが、唖然と見とれてしまい、しばらく声が出なかったことを覚えています。それほどに壮大で幻想的な景色でした。
「チングルマ」は見ての如く可憐な花ですが葉っぱに特徴があります。革質の光沢があり、草花にはない手触りが楽しめます。なんといっても、花後の風車のような実が心を和やかにしてくれます。雪が降ると寒さが身にしみますが、晴れた穏やかな日に「チングルマ」の実が風に揺れるさまをのんびり眺めたり、実の羽毛に触れてみてください。きっと新しい発見が、期待できますよ!
(山梨市森林セラピー推進協議会 森林セラピスト / 四十物治夫(あいものはるお))
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