ハゼランは夏から秋に路傍で見られる「無駄にかわいらしいザッソウ」です。道端のすき間などに生えていることも多いですが、住宅の外壁沿いに並べられている鉢やプランターのなかにもよく見かけます。
名前の由来はよくわかっていません。ハゼランの「ラン」は「蘭」の字を当てます ※注1.「ハゼ」は「米花」や「爆」の字を当て、花の咲き方などに由来するとされますがはっきりしません。
熱帯アメリカ原産で、日本に入ってきたのは明治時代です。園芸目的(おそらく観賞用)で導入され、栽培していたものが逃げ出して道端のザッソウと化し、現在に至ります。来日したときは園芸植物、今はザッソウ扱いです。
無駄にかわいらしいので園芸目的で導入されたのも納得です。花壇の隅で数株まとまって咲いていると、引っこ抜くのをためらうくらいです。冒頭に『鉢やプランターのなかでもよく見る』と述べましたが、筆者同様に引っこ抜けず残している方がほかにもいるのかもしれません。
では、どこがかわいいのか? 具体的に語っていきます。
まず花です。花の大きさは径6mmほどしかありませんが、逆にその小ささがかわいらしく感じます。色はピンクで星形、雄しべは花粉を出して先端が黄色くなります。この花びらと花粉の色合いもポイント高いです。お昼の3時頃に開花するので、サンジソウ(三時草) ※注2 の別名があります。
つづいて花後にできる果実です。果実は径5mmくらいの球形で、ツヤツヤとした光沢があります。細かく枝分かれした花茎の先端にひとつずつ実った姿は、花以上にかわいらしいです。果実の中のタネが散布されて盛大に増えていくので、ザッソウに日々頭を悩ませている方にはありがたくない存在かもしれません。
葉っぱはツヤのある軟らかい緑色で、茎の下部に付きます。食べることができ、原産地では栽培されることもあるそうです。「新芽と葉をゆでて、ホウレンソウのように食べられる。ぬめりがあり、ツルムラサキに似た風味がある」 ※注3 ということです。
以上、ハゼランでした。みなさんも道端でぜひ愛でてください。
※注1 ハゼランはランの仲間(ラン科)ではありません。その他にも、「ラン」と名前が付くけれども、ランの仲間ではない植物はたくさんあります(例:ヤブラン、オリヅルラン、など)。
※注2 アカバナ科クラーキア属にも、サンジソウと呼ばれる植物が存在します。こちらは漢字を当てると「山字草」、由来は花の形が「山」の字に見えるからです。また、クラーキア属はサンジソウ属とも呼ばれます。
※注3 引用元:橋本郁三(2007) 食べられる野生植物大事典 新装版 草木・木本・シダ 柏書房
(ヤサシイエンゲイ 小林昭二)