ヨウシュヤマゴボウは夏から秋に空き地やあれ地、街中の片隅で見られます。生育環境によっては人の背丈を超す大型のザッソウですが、周りを圧倒するような禍々しい感じはありません。むしろ野草の趣があり、風情すら感じさせます。
きちんと手入れされている花壇や庭に混じって生えているものを、ときおり見かけます。
花壇や庭の世話をしている方が意図的に残しているのかもしれません。茎は鮮やかな赤色で、穂状に付く花も果実も存外にかわいらしいです。秋の紅葉も季節を感じさせる点で、ポイントが高いです。
ヨウシュは『洋種』と書き、外国産の種という意味です。名前の通り北アメリカ原産で、アメリカヤマゴボウとも呼ばれます。日本には明治時代に渡来して野生化した帰化植物です。根がゴボウのように太くなるのでこの名前がありますが、有毒で食べることはできません。
近い仲間に『洋種』の付かない単なるヤマゴボウがありますが、筆者はまだ見たことがありません。
ちなみにヤマゴボウの名前で市販されている漬け物などがありますが、これはキク科のモリアザミなどを加工したもので、まったくの別物です。
花は径5mm程度で、穂状にたくさん咲きます。花びらのように見える白い部分は萼片(がくへん)で、ほんのり紅色を帯びます。花の真ん中に子房がありますが、カボチャみたいなカタチでかわいらしいです。ここはぜひ実物で確かめてほしい要チェックポイントです。
子房はその後ふくらんで、果実となります。熟した果実は黒に近い紫色になり、真っ赤な花柄(かへい)や花軸(かじく)との色合いも鮮やかです。見る人によっては、少し毒々しく感じるかもしれません。ブドウの房のようにみえますが、有毒で食べることはできません(果実だけではなく、根・茎・葉などすべての部分が有毒です)。鮮やかな色合いは、種子を散布してくれる鳥に果実を食べてもらうためのアピールのようです。果実を食べた鳥は毒に当たらないのでしょうか?
熟した果実は瑞々しく、つぶすとブドウジュースのような濃い紫色の汁がでます。その様子から、アメリカではインク・ベリー(ink berry)の別名があります。服に付くとなかなか色が落ちなくてやっかいだと、庭師の方が言っておられました。みなさまも観察する際は気をつけてくださいね。
(ヤサシイエンゲイ 小林昭二)