「紅一点」という言葉はザクロを詠んだ漢詩、王安石の咏石榴詩「万緑叢中紅一点(ばんりょくそうちゅうこういってん)」に由来するそうです。万緑叢中紅一点とは、「一面緑のなかで紅色の花(ザクロの花)が一輪咲いている」ということで「たくさんのなかで、ひときわ目立つもの」という意味合いを持ちます。
実際、新緑のなかでぽつぽつと咲いているザクロの花はとても目を惹きます。花はさほど大きくないですが、その鮮やかで目の覚めるような緋色の花姿が目を惹く理由でしょう。「紅一点」という言葉を見事に体現しています。
ザクロはイラン、アフガニスタン、パキスタンなどに分布し、平安時代のころ中国経由で日本に入ってきたとされます。庭木として植えられているものをときおり見ます。八重咲き種は主に花を観賞するので、ハナザクロと呼ぶこともあります。樹高が低くて果実も小さいヒメザクロをはじめとして、花色や樹姿が異なるさまざまな園芸品種があります。
ザクロは6月から7月頃に花が咲きます。前述したとおり非常に鮮やかな緋色です。散った花びらも非常に鮮やかで、ザクロの株元を彩ります。
花びらが散った後は、鮮やかな緋色の萼(がく)が残ります。萼は子房とくっついており、この部分が丸くふくらんでみなさまもご存じの「ザクロの実」になります。ザクロの実に突起状のおへそのような部分がありますが、そこが萼の名残です。
果実になる前にぼとぼと枝から落ちる萼も多く、花後すぐに落ちるものもあればふくらんでいる途中で落ちるものもあります。
花後すぐに落ちた萼は非常にユニークな姿です。はじめてこれを見たとき筆者は「タコさんウインナーだ!」と思いました。タコさんウインナーと間違えたわけではなく、そのように見えたということです。さすがに本物とは間違えません(笑)。
ネットで「ザクロ ウインナー」と検索するとザクロの落ちた萼の画像がたくさん出てきます。そう思っているのが自分だけじゃなくてホッとしました。拾って並べてみたりすると非常に楽しいです。ドングリ拾いに通じるものがあります。
ザクロのタコさんウインナーは6月から7月に見ることができます。興味のある方はぜひ、実物を探してみてください。
(ヤサシイエンゲイ 小林昭二)