亜高山帯から山地にかけて、林内や林縁に生える「ハナチダケサシ」を紹介します。
ユキノシタ科チダケサシ属の多年草で、本州の中部地方を中心に分布し、同じ仲間のトリアシショウマやアカショウマと混在する地域もあります。
日本語では“花乳茸刺”と書きます。乳茸を収穫して、この花茎に刺して持ち運んだことからこの名前が付いたともいわれています。
根茎は、横に這うか又は斜上して走出枝を出します。根出葉は3回(又は複数回)出て、3個の葉を付けます(上の写真)。
最も先の小葉は卵形をしており、その先端は尾状をしています。基部は浅い心形をしており、縁には鋭い欠刻状の重い鋸歯(きょし)があります。
花茎は高さ40〜70cmになります。花序は円錐状で、写真のように側枝がよく分岐して、白色の小さな花を密に付けます(下の写真)。花弁は白色で上部はへら形、下部は糸状をしており、長さは4〜6mm程度です。
花の時期は一般的には7〜8月ですが、西沢渓谷では7月中旬以降が見頃になります。
次の写真の「トリアシショウマ」はよく似ていますが、葉や花序が少し違うのが判ると思います。また、少し早い時期には「アカショウマ」という同じ仲間も見られますが、花序が赤味を帯びているので見分けられるでしょう。
西沢渓谷ロードでは、全般に渡って今回紹介する「ハナチダケサシ」の鮮やかな白色が目を惹きます。渓流沿いにもありますので、白い花が見付かったら確かめてください。
更に先に紹介した「トリアシショウマ」「アカショウマ」など似通った花が多様に見られます。同じような時期にこれらを見比べられるのも、西沢渓谷ロードの魅力です。
淡い香りや花序の独特な手触りが楽しめます。渓流をバックに花序の揺れなどをじっくり眺めることをお奨めします。西沢渓谷を訪れる機会に“自然の揺らぎ”をぜひ体験してみてください。
(山梨市森林セラピー推進協議会 森林セラピスト / 四十物治夫(あいものはるお))
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