今回は、夏の終わりまで見られる「タマアジサイ」を紹介します。
日本固有であり、本州(福島県~岐阜県)の主として太平洋側の山地に分布し、沢沿いの肥沃地や斜面などに生えています。アジサイ科アジサイ属の落葉低木で、高さが2mに達します。
樹皮は通常、灰白色で不規則に裂け、薄片となって剥がれます。枝はほぼ円形をしており、皮目(ひもく)が散らばるように開いています。
冬芽は長卵形で鱗片葉(りんぺんよう)が十字の形で対生するのが特徴です。
葉には長さ1〜9cmの柄が付き、葉身は長楕円形・倒卵状楕円形・倒卵形をしており、長さ10〜25cm、幅は4〜12cmあります。先は鋭尖形で、基部はくさび形又は円形が多く希にやや円形をしています。側脈は6〜8対で両面にわずかに隆起しており、両面ともザラザラの硬毛が生えています。
花期は、7〜9月です。写真のように枝先の頂部に集散状の花序を付けます。初めは上の写真の右にある円形の大きな数個の総苞(そうほう)に包まれて球形をしています。これが、「タマアジサイ」の名の謂われです。この赤味を帯びた総苞は、花序の展開と共に脱落します。
花序の柄は白色で、毛が密生しています。装飾花は長い柄を持っており、花弁様萼片(かべんようがくへん)は3〜5個です。長さ7〜12mmの広卵形、円形で、白色または紫色を帯びることもあります。
普通、花は小さく、花筒は半円形で長さは1.5mm程度です。萼裂片(がくれつへん)は4または5個で、長さは0.5mmくらいの三角形をしています(果期まで残ります)。5個ある花弁は散りやすく、蕾のときは紫色でのちに淡紫白色になります。長楕円形~狭卵形をしており、先は切形~鈍形で、長さは約3mmです。
雄蕊(おしべ)は10本で、紫色を帯びた花糸が真っ直ぐ立っています。
朔果(さくか)はほぼ球形で、径は約3mmです。種子は沢山あり線形ですが、両端に突起状の翼が付いています。
西沢渓谷のコ-スは「タマアジサイ」が至るところで見られます。ゲ-トを通過するとすぐ右側にあるのが目に付きます。もちろん、写真のような渓流添いの道の両側や、少し日当たりの悪い林の中でも見ることができ、約3か月くらいは続きます。
しかも、すぐ手の届くところにあるので、じっくりと時間をかけて観察するのもおもしろいでしょう!
「タマアジサイ」はあまり香りはありませんが、触覚を楽しませてくれます。蕾、葉の両面、枝、花序の柄などの手触りを試してみてください。めったにない体験ができるかも知れませんよ。
(山梨市森林セラピー推進協議会 森林セラピスト / 四十物治夫(あいものはるお))