今回は西沢渓谷でも多く見られる「トウゴクミツバツツジ」を紹介します。
ツツジ科ツツジ属の高さ1.5〜3mの落葉低木で、普通の「ミツバツツジ」が低地で見られるのに対し、より高い山地に生えるのが特徴です。山形県東部・宮城県〜関東〜中部〜鈴鹿山脈地方の太平洋側の温帯上部の山地の林の中で見られます。
4月中旬〜5月中旬に葉が展開する前に赤紫色に開花します。枝先の1個の花芽から1から2、3個の花が開きます。その花柄は長さが5〜9mm、萼(がく)はお皿の形で、ともに軟毛が密生しています。
花冠は紅紫色で上側内面に濃色の斑点があり、径は3〜4cmの漏斗(ろうと)形で5つにやや深く裂けています。雄蕊(おしべ)は10本と多く、花柱が長短あることも特徴の一つです。
ちなみにミツバツツジはトウゴクミツバツツジの半分の5〜6本です。
開花後に枝先から3枚の葉が輪生します。長さ2〜4mmの柄の先の葉身は長さ4〜7cmで、幅3〜5cmの菱形状円形又は菱形をしています。葉先は尖っており、中央部のやや下が最も幅広くなっています。付け根部は鋭利状に葉柄に流れています。表面は無毛で、裏面には短い毛が散らばり特に主脈の下部に軟毛が密集しています。
ミツバツツジと名がつくのは日本全国で10種類以上あるといわれており、更に亜種・雑種を含めると20を超える固有名があるようです(たとえば北海道日高地方のヒダカミツバツツジから屋久島のヤクシマミツバツツジなどなど)。
これらはそれぞれ特徴が異なるので、それらを確認しながら観察することも楽しみ方の一つになるでしょう!
西沢渓谷ではゲ-トを入ると直ぐに目に飛び込んできますが、傾斜の緩やかな旧トロッコ道の方が数も多く道幅も広いので間近に観察することができます。
「トウゴクミツバツツジ」はフィトンチッド(香り成分)そのものが少ないので、香りを確かめるのはむずかしいかもしれません。雄蕊の数や、葉っぱが出ていればその裏面にも注目するといった新しい発見を楽しんでください。
西沢渓谷をゆったり時間をかけて歩くことで、五感がよみがえり香りの少ない「トウゴクミツバツツジ」を嗅ぎ分けることができれば、それは森林セラピ-効果が十分に得られた証です!
(山梨市森林セラピー推進協議会 森林セラピスト / 四十物治夫(あいものはるお))
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