春の便りが聞えてくる頃、まず目を惹くのが「ダンコウバイ」です。
クスノキ科クロモジ属の落葉低木で、本州関東以西の水捌けの良い斜面によく見かけます。3~4月頃、葉っぱが出る前に黄色い花が咲くので目立ちます。
これらの花は前年の枝の腋(わき)に当たる箇所に葉芽(はめ)を含めた芽として数個付きます。この芽の花が咲いた後も新しい枝が伸びてその先に葉っぱが付くことになるので、結果的に花(のちに実になる)が枝の基部に残された形です。
花は小さく、散らばるように咲くのが特徴です。これらの花は2~4cm 程度のほぼ球形の塊を形成しますが、あまり大きくはなりません。
この写真の花の上に緑色の葉っぱの一部が見えていますが、これらがこののち枝として伸び、その先に葉っぱができるのです。大きくて形に特徴があるで、見つけやすいでしょう!(下の写真)
葉っぱの長さは5~15cm、幅は3~13cmあり広い卵形で、先の方は浅く3つに裂けて特徴的な形をしています。小さな花からは想像できないような大きさです。
秋になると落葉前にきれいに黄葉(こうよう)するので、特別に目立ちます。
9~10月頃、1.5~2cmの柄の先に約直径8mmの実が赤く熟します。
今回紹介した「ダンコウバイ」はクスノキ科クロモジ属の一つで、多くの人が“爽やか・好きな匂い”といった感想を言ってくれます。
森林セラピーは、嗅覚を刺激して樹木や草花から得られる癒し効果を最大限に吸収するとともに、森全体の香りや木々の揺れ、風の音、セセラギ、木漏れ日などの“揺らぎ”をじっくりと時間をかけて味わうことでリラックス効果が生まれるといわれています。
「ダンコウバイ」は比較的近隣の里山などでも見られますので、ただ眺めるだけではなく、葉っぱの香りを直接嗅ぐことをおすすめします。花が終り、小枝が伸び葉が生長して新緑の季節になるとフィトンチッド(香り成分)が最も多くなります。この特徴ある大きな葉っぱを探して、ぜひ香りを確かめてみてください。
(山梨市森林セラピー推進協議会 森林セラピスト / 四十物治夫(あいものはるお))
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