明けたばかりと思っていた2018年も、あっという間にひと月が過ぎてしまいました。この間は全国的に大雪でしたが、皆さんのお住いの地域ではいかがでしたでしょうか。諸般の事情で今回、久々の寄稿となりますが、今月からまたオーガニックガーデニングの連載を再開いたします。どうかよろしくお付き合いのほどお願いいたします。
さて、今回のお題はその「雪」です。
降雪や積雪が私たちの生活にどんな影響をもたらすでしょう。そもそも寒くなるからイヤ。道が渋滞するし、事故も起こるので困る。電車が止まって迷惑するから嫌い。雪かきするのがしんどい。いろいろ(ネガティブ)なご意見があるでしょう。ただ、自然界の中で雪がどんな重要な役割を果たしているか、ご存じですか?
私の仕事の現場の一つ、島根県の中山間地域はかなり雪が降ります。毎年、大抵12月の半ばあたりから降り始め、2月中くらいまでは雪で覆われます。もちろん地元の方々も雪はご免、とおっしゃっています。が、それがもたらすものがどんなに宝物なのかもさすがによくご存じです。この迷惑ばかりに思える雪が積もらないと何が起こるのか……。それは「夏場の水不足」です。稲や野菜は大変なことになるのです。
「水不足? だったら雨がもっと降ればいいのでは?」と思われるかもしれません。けれど、雨は降ればすぐ地表を伝って川に達し、海へと流れ去ってしまいます。平野の多い都市部に住んでいるとあまり実感しないものの、私たちのこの国はかなり傾斜がきつい山がちの国。実はその雨、水資源としてはかなり効率が悪いのです。
そこで雪の出番です。山や高地に降った雪は気温が上がる春になって初めて、じわじわと融け出します。ゆっくりと山の土に染み込み、山の土中に水はたっぷり蓄えられます。蓄えきれない水が地下水脈まで達し、それから扇状地で湧き出したり、川に向かったりするのです。
山の土は、落ち葉などが分解された有機質が豊富で保水力の高い土。雪とそうした豊かな土が、下流や低地にゆっくりと水を供給する調整弁の機能を担っています。そのおかげで、春の芽出しで水分を欲する山の樹木や田や畑の植物には恵みの水が届くのです。必要な時に必要なものが回ってくる。自然の循環はほんとによくできています!
では、なぜこのコーナーでこの雪の機能に言及するか。
それは、私のオーガニックガーデニングでは、まさに雪どけ水を長く保持してくれる山の土作りを目指しているからです。そういう保水性の高い土。それは雪だけでなく、もちろん雨も保持してくれます。そんな土があってこそ、お花や樹木は健やかに育つ。土は大事です。土を育てて、夏に毎日お庭や鉢植えの水やりに追われる日々とはさよならしましょう。
(オーガニックガーデナー 花房美香)
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