今回、ご紹介するのは「ダイモンジソウ」。花が「大」という字に似ていることからその名前が付いたといわれています。山地の湿った岩上に生えるユキノシタ科の多年草です。
一般的に「ダイモンジソウ」の花期は、7~10月といわれていますが、ここ西沢渓谷ではお盆前後から見ることができます。
「ダイモンジソウ」は、根が短いのが特徴。5~20cmの葉柄を付けた葉身は賢円形で、長さは3~15cm、幅は4~20cm、5~17程度の浅い裂があります。
花茎は、高さ5~40cm 、花弁は白色ですが、希に淡紅色のものもあります。5弁の花弁のうち、上の3 弁は楕円形で長さ3~4mm、下の2弁は線状楕円形で長さは4~15mm、雄蕊は10個で長さは3~4mmです。雄蕊先端部(裂けて開く前の花粉を包んだ嚢状)は、橙赤色または暗紅色を帯びています。花の中央にある雌蕊の上位にある黄色い部分は、受粉後に実になります。
「ダイモンジソウ」は、日本全土(アジア大陸の北東側や千島・樺太にも分布)の海岸から高山まで見られます。そのため、変異の幅も広いといわれており、特に花の色や葉の形、大きさ、切れ込みの程度の差等によって、数多くの区別がされています。その一例として、「ヤクシマダイモンジソウ」や「イズノシマダイモンジソウ」など地域名が付けられたものもあります。
森林セラピーは、五感(視・聴・嗅・味・触覚)や身体全体で森を感じることで癒し効果が生まれるといわれています。「ダイモンジソウ」は可憐な花に目が行きますが、実は、花や葉っぱなどからも香りが出ています。葉っぱに触れてみることもお勧めです。滅多に無い触覚を経験することができるかもしれません。
西沢渓谷は国立公園のため、採取することはできませんが、ユキノシタ科の「ダイモンジソウ」は、葉を天麩羅にするととても美味しいですよ。また、この可憐な野草が、聴覚以外の五感を楽しませてくれます。
晩夏から秋にかけて咲く 数少ない野草の一つである「ダイモンジソウ」の魅力を、ぜひ体感してみてください。
(山梨市森林セラピー推進協議会 森林セラピスト / 四十物治夫(あいものはるお))
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